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インタビュー / INTERVIEWの最近のブログ記事

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【SARAVAHレーベル50周年特別企画】大塚広子(DJ)×高木洋司(COREPORT)対談:インタビュー / INTERVIEW

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ピエール・バルーが設立した音楽レーベル、SARAVAH。
今年はレーベル設立50周年ということで今改めて注目を集めています。

6月22日には、サラヴァの膨大なカタログの中からジャズ的感性溢れるスピリットや
エキスが感じられる音源をDJの大塚広子がコンパイル。

そこでJJazz.Netでは"SARAVAHレーベル50周年特別企画"として、
DJ大塚広子さんと日本でのサラヴァ音源の発売元であるCOREPORTレーベル代表、
高木洋司さんとの対談を行いました。

サラヴァの魅力やサラヴァから感じるジャズのエッセンスなど、非常に興味深い内容です。

7月のJJazz.Net「PICK UP」ではこの模様を少しご紹介。
そちらも是非お聴き下さい。


JJazz.Net「PICK UP」 (配信期間:2016年7月6日~2016年8月3日)
http://www.jjazz.net/programs/pick-up/




【大塚広子(DJ)×高木洋司(COREPORT)対談】


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高木:大塚さん、まずは『JAZZ EXTRACT OF SARAVAH』の選曲、ありがとうございました。これ、すごく良いですよね。


大塚:ありがとうございます。よかったです。


高木:僕も今まで色々な方にサラヴァ音源をコンピ編集していただいて、それぞれが魅力あるものでしたが、今回独特なオリジナリティのあるカラーというものを感じることが出来ました。今年3月にサラヴァの1972年作『ミシェル・ロック/コーラス』をコアポートで世界初CD化する際、大塚さんにライナーを書いていただいたのがサラヴァに関する最初の接点でしたが、そもそも大塚さんご自身、このサラヴァというレーベルとはどういった出会いだったのでしょうか。


大塚:最初の出会いは、「サラヴァ・レーベル」というものを意識して"レーベル買い"をしていたというよりは、ひとつひとつ気になる個々のアルバムとの出会いが繋がってきたという感じです。例えばトリオ・カマラとか、バルネ・ウィランの『MOSHI』とかそのあたりのアルバムとの出会いが強烈でした。印象としてはちょっと妖しげな感じというか。それからどんどんコレクションが増えていく中で、やっぱりサラヴァって変なレーベルだな(笑)と。それを魅力に感じてしまったんですね。


高木:トリオ・カマラやバルネ・ウィランはどうやって知ったんですか。


大塚:トリオ・カマラは大学生ぐらいの時だったかな? いろいろなジャンルを聴いていた時期でしたが、実はジャズを買うというハードルは当時の私にとって高かったんです。だから"いわゆるジャズ"じゃないけど"少しジャズっぽい"ところが聴きやすかったんです。また、ブラジル音楽の要素もあるアルバムなので、異なるジャンルの端と端が繋がっているようなところが出会いやすかったんでしょうね。


高木:それはわりとサラヴァ・レーベルの本質のひとつかもしれませんね。


大塚:そうですね。私もどっぷりという程ジャズを聴いていた時期ではなかったので、こういった作品との出会いは貴重でした。


高木:今やどっぷりどころではないですからね(笑)


大塚:いえいえ、予期せぬ方向にという感じです(笑)


高木:『ミシェル・ロック/コーラス』で書いていただいたライナー原稿内容もそうでしたが、大塚さんのDJ活動やご自身が手掛けているレーベルのプロデュース活動とかから、非常に全方位的な動きを感じていました。全方位と言いつつそれは脈絡がしっかりあって、何かあるひとつのことにフォーカスしているような印象でした。そんな大塚さんがどういったサラヴァ観、ひいてはジャズ観があるのかにとても興味があったんですよ。このコンピはそれが出ていると思います。もともと大塚さんへの選曲オーダーはサラヴァ音源から感じるジャズのエキスのようなものをセレクトして下さい、というものでしたが選曲過程でレーベルの印象は変わってきましたか?


大塚:そうですね。個人的なコレクションですと好きなアーティストなどのピンポイントの聴き方メインでしたね。アート・アンサンブル・オブ・シカゴがプリジット・フォンテーヌとアルバムを作った頃の年代や、『ミシェル・ロック/コーラス』が作られた頃、そのあたりの1971年前後の前衛的な作品が続出していた時代の音が好みだったんです。それ以降、ちょうどLPからCDへ変わっていった頃の作品はなかなか耳にすることが無かったんです。ただ今回聴いてみると幅広いサウンドがあるのはもちろんですが、その中から人間的な部分というものを非常に強く感じました。喜怒哀楽を感じる音楽がたくさんあるなと。最初にもちろん「JAZZ」というコンセプトで選曲するつもりが、もっと人間味のあるテイストに魅かれてきたんです。「JAZZ」というキーワードはありつつ、それを演奏している人間が見えてくるような。そういったところを表現できれば良いなとシフトしていきました。


高木:なるほど。僕もフォーマットや演奏スタイルとしてのJAZZをセレクトしてほしいというよりも、大塚さんがどういったところにJAZZを感じるのかに興味があったので、そこはすごく出ていますよね。実際にDJでかける曲もあるんですか?


大塚:いえ、正直に言うとこの中では1曲ぐらいですね(笑)。今回収録曲以外で他にはナナ・ヴァスコンセロスの『ナナ=ネルソン・アンジェロ=ノヴェリ』とか、バルネ・ウィランとか自分でこのコンピからかけたい曲もありましたが、あえて外しました。今回初めて知った曲、私自身にとっても新たな発見、そんな曲を多く収録しました。


高木:そうだったんですか。それでは選曲スタートの際、ご自身の中でメインとなる曲は何でしたか? 選曲をお願いした当初は何か浮かびましたか?


大塚:いえ、初めはなかったです。自分の持っているサラヴァ・レーベルの好きな作品はありますが、一回まっさらにして、隅から隅まで聴いた上で取り掛かろうと思いました。


高木:ということは、選んでいくなかで、いくつかの方向が出たと思います。まずこれはJAZZだな、というものから、通常捉えられているJAZZではないもの、大枠この二つだと思いますが、選曲を終えてそれぞれを象徴する曲はどれでしょうか。


大塚:前者ではジョルジュ・アルバニタ、ミシェル・グレイエ、ルネ・ユルトルジェ、モーリス・ヴァンデによるアルバム『ピアノ・パズル』からの「Philly」です。後者だと今回たくさんあって選ぶのは難しいですが(笑)、フィリップ・マテ&ダニエル・ヴァランシアンの「Sanza sallée」ですかね。


高木:出た(笑)。非常に象徴的ですね。
このアルバム『ピアノ・パズル』、当時から有名なピアニスト4人が共演した内容です。オリジナルLPは4人の共演盤1枚と、それぞれの演奏盤が4枚からなる5枚組で変形ジャケというブツですが、大塚さんが選んだ「Philly」は4人の共演盤からで、なかなか凄いところを選びますね。


大塚:そうですか(笑)。このアルバムからは他にも入れたい曲があって迷いました。


高木:もう1曲のフィリップ・マテ&ダニエル・ヴァランシアン、これはよく入れましたね(笑)。サラヴァのコンピでこれを入れた方は初めてです。でも今聴くと「この曲やばいぞ」というほうがフィットしますし、そのあたりの選曲眼はさすがですね。


大塚:いえいえ、でもこれは凄いですよ!是非聴いていただきたいです。初CD化を願ってます!


高木:どうしよう(笑)。ちなみにこのコンピは全21曲ですが、これは3曲目に入っていますね。まず冒頭1曲目は典型的なJAZZですが、2曲目からはかなり様々なタイプのサウンド、これもJAZZ ?というナンバーが色々な方向から迫ってきます。それがいつの間にか中盤からこの12曲目「Philly」のようなサウンドに収斂していく。このあたりは凄いです。僕は個人的に前半部がかなり好きなんです。このストレンジな感じの3曲目からジャック・イジュランに続くという、これは一体どういう頭の構造なんだろうと(笑)。これはわりとスッと決まったんですか?


大塚:いえ、前半の作り方は最後まで迷ったんです。どんどん代案がでてきて、そこから絞る作業が大変でした。特に前半の多彩なヴァリエーションをどこまでまとめていくかを迷いました。ここの3曲目マテ&ヴァランシアンからの繋ぎは特に迷ったんです。


高木:ということは当初から、前半部のほうをいかにもJAZZ的にするという構想はなかったんですね。


大塚:いや......あったかな(笑)。まあ後半部のほうは、自分がいつもDJする時もそうですが、後半のほうの流れというものを最初に思いつくんです。その上で最初どこまでかき乱すかということは自分の選曲の中でのやりがいでもありますし(笑)。もちろんやり過ぎるのも注意しながらですが。そのあたりが今回は迷ったところですね。


高木:ここからさらに5曲目のマジュン。これはフレンチ・プログレ・バンドですが、そのバンドが昔からある「Le dénicheur」というミュゼットをやってます。そこからフラメンコに繋がったり、いろいろと展開しますが(笑)、逆にクッキリひとつのものが見えてくる感じが不思議とありますね。


大塚:私もこの前半部が、見知らぬ土地の場所で誰かわからないミュージシャンたちが、いろいろと演奏しているという想定で選びました。その選曲作業が結構楽しかったんですね。


高木:なんだか夏フェスみたいですね(笑)。色々なステージで色々なタイプの音楽があるという。


大塚:あー、そうかもしれません(笑)。


高木:後付けかもしれませんが、そういった「在り方」に大塚さんはJAZZを感じるんですかね。


大塚:そう言われてみると、そうかもしれないです。


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高木:あとは曲つなぎのテクニックもあるかもしれませんが、そういった夏フェス的な感じが混然一体となってだんだんとコンピが進んでいく。そうした中で「これを入れたのか!」と思ったのが9曲目のモーリス・ルメートルとアレスキのトラック、そしてこれがミシェル・ロックに繋がるというこのあたりは最高ですね。ルメートルはレトリスム運動を象徴する人で、まあ今聴くと歌い方はラップのようですが、これも日本初というか世界初CD化曲です。でも普通入れないですけど(笑)、すごくかっこいいですよね。


大塚:いや(笑)、これはもう絶対「何これ!」と聞かれることは間違いないですね。


高木:ブリジット・フォンテーヌのパートナーであるアレスキが、パーカッションを叩いていて、これがまた良いですよね。


大塚:邦題が「ダンスのためのレトリスト即興」ですが、まさに象徴していると思います。


高木:これなんかMIXしたくないですか?


大塚:したいです!これはJAZZファン以外の方や、コレクターやDJの方にもヒットする曲だと思いますよ。


高木:そのあとに10曲目でミシェル・ロックが続いて、このあたり大塚さんが腕まくりしている絵が浮かびます(笑)。ここまでの様々なタイプの曲を全て引き連れて、ミシェル・ロックが突き進むような。


大塚:はい、ここはかなり自分でもテンション高い感じで(笑)。


高木:ここから高カロリーが続きますね(笑)。でもさすが女性で高カロリーのままでは終わらせず(笑)、そこからの転換がまたいいですね。巧いですよ本当に。特にピエール・バルーの15曲目前後とか。このあたりは狙った感じですか?


大塚:はい、このあたり雰囲気作りというところでは狙いましたね。すごく気持ちが穏やかになるというか、解放されるような空気感があるトラックで、素晴らしいと思います。


高木:最後のほうはだんだんとフランス度が高まっていくように感じました。ピエール・バルーによるコラージュともいえる15曲目。そこからピエールとダニエル・ミルのデュオ。これはバッハの曲にピエールがフランス語歌詞をアダプトしているんですが、ここはたまらないです。さっきまでものすごく盛り上がっていたのが、気が付くと落ち着いた流れになっています。


大塚:私もこのあたりで何度か目頭が熱くなりましたよ(笑)。入りすぎちゃって。ダニエル・ミルは他にもいろいろ良い曲があってかなり迷いました。


高木:このコンピを発売する2ケ月前ですが、Bar Musicの中村智昭さんにもサラヴァの音源をまとめていただいたんですが(『Bar Music×SARAVAH -Precious Time for 22:00 Later 』)、確か中村さんもダニエル・ミルは好きだと言ってました。DJの方に何か共通するものがあるのかな? その中村さんも選んでいた次のル・コック、さらにポエトリー・リーディングのジェラール・アンサロニへ。ピエールとダニエル・ミルのデュオが静謐な感じなので、ここで終わりそうなところから行き着いた展開ですが、ここは流れですか?


大塚:そうです。最後の方をどう終わらせるか。これは出来るだけハッピーに終わらせるというか、しんみりと終わらせないというのが私のタイプなんです。一回落ち着くけど、でも最後は「次につなげていきたい」というような雰囲気を持った曲を選んでいます。


高木:主だった曲について話し合ってきましたが、この全21曲全体については、やはり当初から決めていたというよりも、むしろLIVEのような感じで決まっていったようですね。


大塚:はい、やはり先ほど話しましたが「人間性」というところをうまく浮き彫りにしたいと。色々なタイプの人間がいて、それぞれの人間が出す音楽、それぞれが考えるJAZZのような、そんな選曲になりましたね。あとはそれをどのような物語にしていくかというところで決まっていきました。


高木:確かにどこか温かみのある1枚ですね。そこには大塚さんのパーソナリティーも出ていると思いますが、確かに音の背後から何か伝わってくるようで、サラヴァのレーベル・カラーとも見事に一致していると思います。


高木:そのサラヴァですが、今年はレーベル設立50周年で、予定も盛りだくさんなんです。9月には現地フランスの新録コンピが出ます。これはサラヴァの代表曲を1曲ずつ、複数のアーティストがカヴァーしていく企画です。10月には渋谷O-Eastでレーベル設立50周年コンサートが行われます。ピエール・バルーはもちろん来ますし、その他日本人アーティストも多数参加予定です。そんな長い歴史を持つレーベルの概略を、あるひとつの方向からしっかりと提示していただいて感謝です。僕も新たにこのレーベルの魅力が発見できました。そして大塚さんの個性というものもです。この二つを同時に聴ける楽しさがあると思います。ありがとうございました。最後にこのコンピCD、選曲を終えてどのような感想を持たれましたか?


大塚:サラヴァ・レーベルは、いろいろなジャンルの要素が発見できる素晴らしいレーベルでした。ぜひこのコンピレーションCDを聴きながら、好みの音を発見していただける機会になれば良いなと思っています。


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『JAZZ EXTRACT of SARAVAH SELECTED BY HIROKO OTSUKA』

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Title : 『JAZZ EXTRACT of SARAVAH SELECTED BY HIROKO OTSUKA』
Artist : V.A.
LABEL : コアポート
NO : RPOZ10024
RELEASE : 2016.6.22

アマゾン詳細ページへ


【SONG LIST】
01. ラ・パルク/トリオ・ミシェル・ロック
02. むこう岸/ピエール・バルー
03. サンザ・サレ/フィリップ・マテ&ダニエル・ヴァランシアン
04. ほらって言ったよね、ほら/ジャック・イジュラン
05. ル・デニシュール/マジュン
06. ブレリアス・エルマノス/アルマディージョ
07. お前の船は出ていった/ミシェル・ビュラー
08. 俺の勝手だろ/チック・ストリートマン
09. ダンスのためのレトリスト即興/モーリス・ルメートル&アレスキ
10. ムッシュー・チンパンジー/ミシェル・ロック
11. レ・ロジュ・デュ・T.P.F./トリオ・ミシェル・ロック
12. フィリー/ジョルジュ・アルバニタ、ミシェル・グレイエ、ルネ・ユルトルジェ、モーリス・ヴァンデ
13. バイ・バイ・ベルヴィル/カルテット・エラン
14. グアンタナメラ/レオ・ブローウェル
15. 宴の終わり/ピエール・バルー
16. アコーディオン/ダニエル・ミル & ピエール・バルー
17. バッサンの馬鹿ども/ダニエル・ミル
18. マリア・カンディダ/マス・トリオ
19. 自分でイライラしている/ル・コック
20. 精神的な面接/ジェラール・アンサロニ
21. ビフ/アレスキ

世界初CD化 M-3, 7, 9
日本初CD化 M-1, 5, 13, 19, 20


サラヴァの膨大なカタログの中から、ジャズ的感性溢れるスピリットやエキス(JAZZ EXTRACT)が感じられる音源をDJ大塚広子がセレクト。サラヴァ特有のディープネスとモダンな感覚を手作りコラージュのようにシャッフルし、新しいサラヴァ・ジャズ観を提示した必聴コンピ。世界初CD化3曲、日本初CD化5曲収録。




■サラヴァ・レーベルCD INFORMATION
http://www.coreport.jp/saravah/index.html

NOW ON SALE
『ピエール・バルー&フランシス・レイ/VIVRE』 RPOP-10017
『ピエール・バルー&/サ・ヴァ、サ・ヴィアン』 RPOP-10018
『ブリジット・フォンテーヌ/ラジオのように』 RPOP-10013
『ナナ・ヴァスコンセロス/ナナ=ネルソン・アンジェロ=ノヴェリ / アフリカデウス』 RPOP-10014
『ミシェル・ロック/コーラス』 RPOZ-10022

COMPILATION CD
『サラヴァ・ジャズ』 RPOZ-10019/20
『パリ18区、サラヴァの女たち』 RPOP-10012
『Bar Music×SARAVAH -Precious Time for 22:00 Later 』 RPOP-10015
『JAZZ EXTRACT OF SARAVAH SELECTED BY HIROKO OTSUKA 』 RPOZ-10024

COMING SOON
『ピエール・バルーwith清水靖晃&ムーンライダーズ/カルダン劇場ライヴ1983』 RPOP-10019 (2016.7.27 ON SALE)
※ピエール・バルーが名作『ル・ポレン』でコラボレイトした清水靖晃、ムーンライダーズをパリのカルダン劇場に迎えて行われた貴重なライヴ・アルバム。

『サラヴァの50年』 RPOP-10020 (2016.9.28 ON SALE)
※サラヴァ・レーベル50周年記念作は、サラヴァの名曲を現代のフランス&日本人アーティストたちが新録カヴァーした超話題作。




■映画「男と女」製作50周年記念デジタル・リマスター版

10月YEBISU GARDEN CINEMA他全国で順次公開(配給:ドマ、ハピネット)
(同時「ランデブー」デジタル・リマスター版)
otokotoonna2016.com






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大塚広子 (DJ/音楽ライター/プロデューサー)

2004年以降、ワン&オンリーな"JAZZのグルーヴ"を起こすDJとして年間160回以上のDJ経験を積んできた。徹底したアナログ・レコードの音源追求から生まれる説得力、繊細かつ大胆なプレイで多くの音楽好きを唸らせている。渋谷の老舗クラブTheRoomにて14年目に突入した人気イベント「CHAMP」など日本中のパーティーに出演。また老舗ライヴハウス新宿PIT INNのDJ導入を提案するなど、音楽評論家やミュージシャンを巻き込んだライブハウスやジャズ喫茶でのイベント・プロデュースを手がける。ジャズ・レーベルのオフィシャルMIX CD/コンパイル(「TRIO」(ART UNION)、「somethin'else」(EMI MusicJapan)、「DIW」(DISK UNION)、「VENUS」(Venus Record)、american clave (East Works Entertainment inc))を手がけ、2014年より、新世代ミュージシャンを取り上げる自身のレーベル、Key of Life+を主催、プロデューサーとしても活動。スペイン、ニューヨークでのDJ招聘、「FUJI ROCK FESTIVAL」2度の出場、菊地成孔との共演及びTBSラジオ出演、BLUE NOTE TOKYOにて日野皓正らとの共演。総動員数3万人に及ぶアジア最大級のジャズ・フェスティバル「東京ジャズ2012」にDJとして初の出演。メディアでのレビュー執筆の他、オーディオ評論、ディスク・ガイドブックやCDライナー執筆など音楽ライターしても活躍中。

大塚広子 Official Site

CRCK/LCKSインタビュー:インタビュー / INTERVIEW





CRCK/LCKSインタビュー


ポップスシーンに突如現れた異能の集団"CRCK/LCKS"(クラックラックス)。結成から1年も経たずにその噂は拡散し、今年4月にはついにアルバムをリリースした。それぞれのルーツミュージックが濃厚に詰め込まれたハイブリッドなサウンドは、明らかにポップの様式美からはハミ出ているが、彼らはそれをとてもナチュラルに鳴らす。そんな彼らの音楽性は、彼らがみな何処か一側面ではジャズ・ミュージシャンであることと切り離せない。

今回は小西遼(Sax, Vocoder, etc,)、小田朋美(Vo, Key)、角田隆太(B)、井上銘(Gt)、石若駿(Ds)というメンバー全員と本作のプロデューサーである阿部氏を迎えて、それぞれのルーツやレコーディングについて、そして彼らが肌で感じるシーンの現状について話を聞いた。

インタビュアー:花木洸 HANAKI hikaru(音楽ライター)






ライブをするまでは誰も長続きすると思ってなくて。


――まずはメンバーそれぞれの経歴について聞きたいな。まず角田くんからお願いします。

[角田]
「僕は高校の時にバンドをやりはじめて、渋谷界隈でライブをやっていたんです。その後に明治大学でビッグバンドをやりはじめてそこからジャズに入っていきました。ジャズと今までやっていた音楽とのハイブリッドなものをやりたいな、と思って ものんくる をやり始めたのが大学を卒業してから。で、そこから5年間ぐらいやって、今はこのバンドもやっています。」


――最初は普通にロックバンドをやっていたんですか?

[角田]
「ロックバンドでしたね。それもメロコア(メロディック・ハードコア)。もう無くなっちゃったんだけど渋谷のGIG-ANTICっていうメロコア界の新宿ピットインみたいなところでよくやっていました。今はいわゆるジャズはほとんどやっていなくて、サポート的に色んな所で弾いていますね。」


――なるほど。じゃあ、銘くん。

[井上]
「俺は15歳でギターをはじめて、18歳でOMA(鈴木勲)さんのバンドに入って、気付いたらこの世界から出れなくなった、みたいな(笑)それだけ。"That's It!"ですね。」

[小西]
「ジャズ以外でプロになろうとかも思ってたの?」

[井上]
「全然全然。ジャズしかやる気なかった。これって決めたら一個のことしかできないタイプなんですよね。」


――「ジャズだ!」って決めたきっかけは何だったんですか?

[井上]
「最初は単純にギターが好きで。クリームとかジミ・ヘンドリックスとかレッド・ツェッペリンとかが好きだったんだけど、ある時親父にマイク・スターンのライブに連れて行ってもらって。それがロック少年にも響く音楽だったから「これもジャズっていうんだ」ってなったのがきっかけだね。」


――なるほどね。じゃあ石若くん。

[石若]
「僕は小学校4年生の時に札幌のビッグバンドに入って、中学2年までそれをやっていて。高校から東京出てきてようやくジャズのイロハがわかり、、、今に至る(笑)」

[小西]
「札幌に居た時は誰かと共演したりしてたの?」

[石若]
「大体今お世話になってる人たちは札幌で出会ってそれからの付き合いだから。「東京に出たい!」ってなったのもその人達に会ったからなんだよね。」

[一同]
「へぇー!」

[小西]
「札幌ではセッションとかしてたの?」

[石若]
「全くしてない。ジャムセッションとかスタンダードとかそういう概念に出会ったのは東京来てからなんだよね。それまではただのドラム小僧でしたね。」


――じゃあ次はリーダーの小西さん。

[小西]
「小学生からピアノを始めたのが一番最初の音楽との出会いかな。きっかけは小学校の発表会でアコーディオンを譜面と鍵盤見てって頑張ってたら、友達が鍵盤見ないでスラスラ弾いてて「かっこいい!」と思って。でもピアノは3年くらいで先生と喧嘩して辞めた(笑)。クラシックの超厳しい先生で。しっかり練習して暗譜して来ないと怒られた。でもその代わりに3年でショパンをガンガン弾けるようになった。」

[小田]
「それはすごいね!」

[小西]
「それ以来ピアノは人に一切習ってない。サックスを始めたのは小学校の時に体育館に隣のクラスの担当の旦那さん、なんと平原まことさんが演奏会を開いてくれた。それを見て「サックスいいじゃん!」ってなって中学校の吹奏楽部でサックスを始めたんだ。親父からはずっと「コルトレーン聴け」とか「キャノンボール聴け」とか言われてたんだけど天邪鬼だったからジャズを毛嫌いしてた。でもルパン三世の吹奏楽バージョンみたいなのを吹奏楽部でやって「カッコいい!」ってなって。で、アニメオタクだったから『カウボーイ・ビバップ』とかからジャズに興味を持っていきました。」


――菅野よう子だ。

[小西]
「そう。菅野よう子ぐらいから入っていって、中3の時にはコルトレーンとか聴き始めてたかな。で、高校入ってからは池袋のマイルス・カフェ(現:SOMETHIN' JAZZ)のセッションに行き始めて、それからは都内でジャムセッションをしたりレストランの仕事とかをぼちぼちやり始めたんだよね。で、洗足学園音楽大学に行って、バークリーに行った。大学の時に藤原清登さんにお世話になった。バンドに入ってアルバムにも参加させて頂いて(『JUMP MONK』)。大学三年の時に明治大学のビッグバンドに一緒にいて、そこで角田と一緒だったんだよね。その前にセッションで出会ってたんだけど。」

[角田]
「高田馬場のコットンクラブね。あの日しか行ったこと無いけど(笑)その日は当時習ってた安ヵ川大樹さんがホストだったからね。」

[井上]
「え、そうなの?」

[小西]
「その繋がりも明治大学のビッグバンドだよね。その後は初期のものんくるに参加してからバークリーに行って、、、その前後でテンテンカルテットってバンドでサッポロ・シティ・ジャズのコンテストの第一回で優勝したり色々してた。 それは柵木雄斗(ds)、吹谷禎一郎(b)に白井アキト(p)って今はもうフュージョンの人になった人で組んでて。」

[石若]
「えーテンテンカルテットだったんだ!俺、あの時会場で見てたよ。応援してました(笑)優勝したならカナダも行ったんでしょ?」

[小西]
「行った行った。トロント・ジャズ・フェスティバル出た。それが大学一年だから18とか19歳の時。で、バークリーでラージアンサンブルを始めて。作曲とか編曲が好きになったのもビッグバンドに居たからだと思うな。銘とはバークリーで一緒だったから当時から知っていたし、角田はメンバーだったし、今回プロデューサーをやってくれた阿部さんもよくラージアンサンブルを見に来てくれていて、そこに朋美も来てくれてって感じで全員飲み友達になったって感じです。」


――じゃあ今やってるのはこのバンドとラージアンサンブル?

[小西]
「そうですね。あと6月に挟間美帆と一緒にユニットを組んでライブをします。第一回はビッグバンドで。挟間さんも結局飲み仲間なんだよね。ニューヨークに居た時に仲良くなって。」


――なるほどね。じゃあ最後に小田さん。

[小田]
「私は母親がピアノの先生だったので小さい頃からピアノをやっていました。母親はクラシックの先生なんだけど、すごくジャズが好きで。母親は割りと厳しい先生だったんだけど、私は練習が嫌いで。勝手に譜面と違うことを弾いたりしてよく怒られてましたね。それで「だったら自分で曲を書いた方がいいな」と思って小さい時から作曲をしていました。歌うのが好きだったんだけど小さい頃は本当に音痴で(笑)」

[井上]
「えー?!」

[小田]
「歌に向いてると思えなかったから、作曲を勉強しようと思って高校から国立音大の附属に行って。あ、その作曲科の同級生には挟間美帆がいたんですよ。」


――へぇー。

[小田]
「で、大学も作曲に行ったんですけど、大学の作曲科の人たちって楽譜が大好きなんですよね。でも、私はそんなに楽譜だけに入れ込めないなと思って。楽譜に託せるものと託せないものがあって、楽譜に託せないものの方に興味があるし、何よりやっぱり歌いたいなと思ったので大学にいる時にライブハウスとかで歌うようになって。その時に阿部さんが聴きに来てくれて。」


――うわぁ、暗躍してますね(笑)

[阿部]
「暗躍してるよ(笑)これは本当に無名の頃で、知り合いに「小田朋美って子がいて可愛いし才能があるし最高なんだよ!」って話を聴いてね。調べたらライブをやってたから観に行って。」

[小西]
「それすごい(笑)」

[阿部]
「それでライブが凄かったから「アルバム出そうよ!」って声かけて一年くらい企画を通すべくいろいろ動いてやっと『シャーマン狩り』が出来てね。」

[小田]
「自分ではアコースティックな編成でライブをやっていて、作曲するときも弦楽器とかを好んでつかっていたんだけど、所謂バンドとかは全然やったことがなくて。今回も阿部さんがきっかけを作ってくれて、ずっと憧れていた「バンド」が出来てすごく嬉しいです。」


――バンド結成の話を教えてください。

[小西]
「それが本当に無いんですよ。飲んでて決まった、っていうだけ(笑)」

[阿部]
「まあそうですね。去年の6月にあって菊地成孔さんのイベントに向けてバンドをブッキングしていた時に、ちょうど小西と小田と飲むなと思って。小西くんが帰国してラージアンサンブルのライブが終わって落ち着いたタイミングだったんだよね。小田と小西が決まって、まず角田くんにファーストコールしたんだよね。で、小西が銘くんに連絡して、俺が駿に連絡してって。」


――じゃあ結成しようってなって、とりあえずスタジオに入って、みたいな?

[小田]
「結成っていうかイベントに向けたリハーサルだったね。」

[小西]
「"よし!これで結成!"っていう瞬間は無いんですよ。なんとなくイベントに出ることが決まって、バンド名をつけたってだけであって。ライブをするまでは誰も長続きすると思ってなかった。一回目のライブがすごい良かったから、アルバムを作ろうってなったけど最初はあんまりバンド感は無くて。」

[角田]
「半年ごとにライブするくらいのペースかなって気持ちだったよね。」

[井上]
「だから全然入ったつもり無かったもん(笑)やっと「バンドだな」と思ったのはレコーディングをした1月くらい。あれで一丸となれた気がする。最初は普通のセッションライブ感覚で行っていて、気付いたら小西くんがFacebookで「CRCK/LCKS始動します!」みたいな事を書いてて俺はそこでバンド名知ったからね(笑)」

[一同]
(笑)

[小西]
「すいません(笑)でもそれくらい誰も執着してなかったんだよね。歌ものをやるっていう事はみんなに電話をかけた時点で決まってたけど。ジャズの面子でジャズじゃないものをやるっていうコンセプトは頭の中にずっとあったね。」


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一番最初にみんなで音を出して感じたのはブラック・ミュージック的な要素だった


――この5人で集まった時に、音楽的な共通項って何だったんですか?

[小西]
「ポップスを好きっていうのは共通項だったね。」

[石若]
「俺が一番最初にみんなで音を出して感じたのはブラック・ミュージック的な要素だったな。」

[小西]
「俺は駿が入るって決まった時点で一曲ゴリゴリのブラック・ミュージックっぽいのを作ろうと思って。それで作ったのが「いらない」。最初はそっちの雰囲気のほうが強かったよね。」

[石若]
「そうそう。でも段々みんなの好きな感じが分かってきてポップになっていった。」


――今回のアルバムは曲をみんなで持ち寄ったってことなんだけど、スタジオでの曲作りはどういう風にして進んでいったんですか?

[小西]
「今回のアルバムに入っている曲は、基本的にはガッツリ決めてスタジオに持って来てますね。というのも、一番最初のイベントの時点で、リハが2,3回しかなくて70分のステージをやらなきゃいけなかったから「ジャムって曲を作っている時間は無いな」ってみんな分かっていたから。譜面を書いたりデモを送り合ったりして作っていきました。今でもだけど、作曲者がイニシアチブをとって曲を作ってますね。一回ベーシックを作って、その中で音色とかアレンジの話をリハーサルで詰めていくという流れです。今回一番リハーサルで変わったのは俺の曲で「いらない」と「坂道と電線」かな。テンポも全然変わったし。」


――なるほどね。僕は音源を聴いてセッションぽくやってるのかな?って思ったんです。とくにドラムとかベースの、良い意味でラフな感じ。

[石若]
「それは俺のせいかも(笑)」

[一同]
(笑)

[小西]
「細かいところを決めるというよりも、フィールを決めたんだよね。」

[石若]
「そう。テイクによって全然違ったんだよね。」

[角田]
「それで成立するのがすごいんだよ。そこを決めちゃうと、駿じゃなくても良くなるというか。」

[小西]
「ベーシックだけ作曲者がガツッと作ってるけど、そこからジャムが始まるみたいな。」

[石若]
「沢山アイディアが出てきて、ボツになるアイディアも沢山あるしね。フィール一つにしてもパターンが沢山あって、それが個々の楽器であるから。で、ライブの為のアレンジとレコーディングでもまた全然違って。アイディアが出すぎて(笑)」


――レコーディングされたものはソロがコンパクトになったり色々ライブとは変わっていたよね。

[小西]
「それはメンバーみんなの中でアルバムを一つの作品として聴かせたいっていうのを考えていたから。俺達の中でもライブする時にアルバムに囚われたくないっていうのはあるんです。メンバーで「ライブはライブで有機的なものにしたい」って話をしていて。今回のアルバムはミックスに時間を掛けたから、俺とかはレコーディングが終わってすぐのリハでレコーディングをめちゃくちゃ追ってしまっていて「カラオケみたいな雰囲気になってる」って言われたりとか。」


――レコーディングはどれくらい時間かけたんですか?

[小西]
「録音が2日でミックスが3日ですね。」


――6曲で録音2日?!かなり素早くやらないとですね。

[小西]
「今回は結構みんな一緒に録ったよね。あとから鍵盤とかは重ねたりはしたけど、リズムはほぼ一緒。」

[小田]
「私の鍵盤も一緒に録ってたよね。」


――へぇー。

[小西]
「だからそこまでにアレンジとかをキッチリ詰めて。ドラム、ベース、ギター、鍵盤、、、「スカル」はサックスも一緒に録ったね。スタジオの部屋の使い方は角田とか銘が慣れてたから「ここにアンプを置こう」とか部屋割りとか色々考えてくれて。」

[井上]
「いい感じにコンパクトなスタジオだったからね。良い意味で豪華すぎないというか。そういうほうが一発録りはしやすいんですよね。」

[小西]
「「スカル」だけサックスの僕が別のブースでみんなが見えないところで音だけ聴いて演奏するっていう録り方だったけど、それ以外はみんな目が合うところに全員いたから。」

[小田]
「歌もほとんど一緒に入れて。でも結局、後日歌とサックスの録り直しを色々したりして。だから録音が全部で3日。」


――今回はミックスもこだわっていたみたいだけど、ミックスする時にどんな音像を目指してたとかあります?

[小西]
「曲ごとにイメージはあったけど、具体的な音像っていうのは無かったかな。あとは僕の中の流行りかな(笑)」

[角田]
「バンドとしては無かったよね。でも小西がリーダーシップをとってくれて「こういう音像にしよう」ってディレクションしてくれた。」


――「いらない」でパーカッションが重なったりしてるのも....。

[小西]
「あれはかなり偶発的なものだったんです。ASA-CHANGがいきなり焼き芋を持ってスタジオに来て(笑)」

[小田]
「だから当日まではあそこまで重ねる予定は無かったんだよね。」

[小西]
「トライアングルを重ねたいとかは思っていて、みんな小物の打楽器をそれぞれ持って来てたんだけど、やってみたら結構色々なアイディアがその日に出てきて。」


――「クラックラックスのテーマ」では電子レンジまで入ってましたもんね。

[石若]
「最初はタイプライターを入れて、ガシャ、ガシャガシャって始まったらいいな思ったんだけど。」

[小西]
「でも良いサンプルが無くて、レコーディングスタジオにあったレンジがめっちゃ良い音してたからそれを使った(笑)」

[角田]
「あれ良かったよね。」


【CRCK/LCKS 1st EP予告編】



[小西]
「アルバムを作る時に銘が言ってたのは、「ラジオとかで掛ける事も考えたら、頭から始まる曲も作ったほうが良いよ」って話をしたんだよね。それもあって銘の曲(「簡単な気持ち」)はど頭から歌が入っていて。」

[井上]
「俺は割りとバッと始まるのが好きだから。」

[小西]
「それぞれが良いところでアイディアをくれたんだよね。躊躇せずに意見を言ってくれる。特に銘は曲が出来上がるところまで待ってくれて、最後に「ここはこうしよう」みたいなのをいいタイミングで言ってくれる。今回は曲が並んだ時に「曲調が似通ってるのが多いから違うテイストの曲も作ったほうがいい」とか、曲の頭の事もそうだし。一歩引いて客観的に見てくれてる。バンドの雰囲気に良い意味で飲まれないで、「いや、もっと良くなるでしょ」って提案してくれてたね。」

[井上]
「面白いですよね。クラックラックスはアイディアマンが多いんだけど、僕自身はまた違ったタイプの人間だと思っていて。だから多分そうやって違う視点で聴こえたり見えるものが結構あるんだと思う。」

[小西]
「クラックラックスはみんなどこか冷静というか、冷めてる部分があるんだよね。それが上手く作用してる。」


――僕はレコーディング前とレコーディング後両方ライブを観てるんだけど、やっぱり後のほうが面白かったんだよね。

[一同]
「へぇー!」


――え、本人たちはあんまり実感無いですか?(笑)

[井上]
「いや、個人的な感覚では1月と3月の自分の状態は違っていて。一回レコーディングをして、2ヶ月経って。ミックスでめちゃくちゃ聴くから、大体僕は自分の音源を聴かなくなるんですよ(笑)聴かなくなって、ライブがあるぞってなると練習する為に聴くんだけど、そうするとまた違った景色からその曲が聴こえるから。それが一周二周って回って、三周くらいしたところでライブを迎えられると体に入っているパーセンテージが違うというか。」


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ソロが長くなってもそれは曲に必要な要素なだけであって、僕達がジャズ・ミュージシャンだからってわけではない。


――クラックラックスとしての「ポップの条件」って何かあります?このバンドは普段ジャズを演奏しているメンバーが所謂バンドのサウンドを作ってるわけじゃないですか。その中で何か意識の違いだとか。

[井上]
「クラックスラックスに関してはジャズとかポップスとか対比するレベルではなく、完全にポップスだと思ってるな。」

[小西]
「そうだね。俺たち的には完全にそういうスタンスでやっている。聞く人によってはジャズテイストってなるかもしれないけど。」

[井上]
「要素としては聞こえるかもしれないけどね。」

[小西]
「作り方としてはジャズの意識はほとんどないね。特に朋美はメンバーの中でもジャズのイディオムを知らない人だから。それも良いバランスというか。ボーカル以外の4人はボーカルに歌ってもらっているというか、歌を支えているっていうスタンスだから。ソロをとりたいとかハプニングする要素を用意したいっていうんじゃない。一番届けたいのは歌だから。歌をメインにして作って、その中で必要だったらソロを入れて。楽器のソロっていうのは所謂ポップスでもよくあるじゃないですか?ギターのソロとかサックスのソロとか。ソロが長くなってもそれは曲に必要な要素なだけであって、僕達がジャズ・ミュージシャンだからってわけではないんです。」

[角田]
「ジャズっぽくないものだから「ポップス」っていう風には言いたくないな。特にジャズの人は、いわゆる「ジャズ」っていうものから離れるほど「ポップスだ」みたいな言い方をしがちだけど。ポップスと一言で言っても広いし、その大きな流れのなかでどういう風に定義するかって事がすごい大事で。ジャズじゃないからポップス、っていう風にはなりたくないと思うし。今はそういう中で個人個人でやっているようなバンドだったりとか企画っていうのがいい感じにまとまってきているような気がしていて。世代的にというか。」

[井上]
「たぶん誰も「ポップスだ」とか「ジャズだ」っていう風に思って演奏してない。曲に対してアプローチしているのが、結果としてどういう風にカテゴライズされるか分からないけれど、みんなが曲に対してそれぞれ自然な形でアプローチしているって感じ。」


――じゃあ意識的にはジャズをやる時と一緒って感じですか?

[石若]
「スタンス的には変わってない気がするね。」

[井上]
「まぁストラト持ったら気分変わるけどね(笑)」

[石若]
「それは俺もバスドラが大きくなったら気分変わる(笑)」

[小西]
「俺は一切変わって無いかな。ジャズの作編曲してる時と、クラクラのスタジオに入った時と。対する意識としてはその時の音楽を良くするってことしか考えてないから。」

[小田]
「私はちょっと変わるかも。バンドの名義になることによってね。音楽よりも歌詞が変わるな。私は自分の名前を出して歌詞を書くっていうことが苦手で。ただ小田朋美っていう名前から逃れてクラックラックスっていう主体が出来た時にそこで書けるものっていうのは意識が違うかもなとは思う。」


――その作詞に関してもうちょっとききたいんだけど、「スカル」だけ園子温さんの詩なんですよね。違う人が書いた詞を持ってくる感じは、僕としてはクラシックっぽい発想だなって思ったんです。違うモチーフを持って来てその上で創作をするっていう。

[角田]
「確かにそうだよね。」

[小田]
「私は詩というものにずっと憧れていて、すごく可能性を感じているんです。だから詩に連れて行って貰いたいという気持ちがどこかにあって。純粋に音楽の為に書かれた歌詞ってだいたい音数や語数が歌いやすい範囲内に収まっているし、形式も一番、二番がだいたい揃っていて、サビも分かりやすくなっているじゃないですか。そういうのは音楽を付けやすいんだけど、読むものとして書かれた詩ってフォーマットがすごく自由なんですよね。そういう自由な詩には音楽を付けにくいし、形式的にも聴きやすい型にはハマらなかったりするんだけど、それがすごく面白いと思っていて。その詩特有の展開や改行の位置、段の分け方など色んな要素がそのまま音楽に変換された時に、音楽からの発想だけでは生まれないフォーマットが生まれると思っていて。だから人の書いた詩に音楽をつけるってことは元々すごく好きですね。」


――ライブではマザーグースの詩(Little Bo Peep)の寺山修司訳に音楽をつけたりもしていましたよね。

[小西]
「それは俺の持って来た曲だね。俺は自分のバンドでも詩をつけるって事はしているし、詩とか読み物は昔から好きなんです。人の詩に曲をつけるって経験としては多くないんだけど、このバンドを組み始めた頃に寺山修司の詩をよく読んでいて、雰囲気がいいなぁと思って。それとマザーグースの世界観がすごい好きだったんですよ。実は他にも寺山の詩に音楽をつけた曲を作っています。マザーグースはもっと定型詩って感じで、Little Bo Peepも元々童謡みたいに作られているものだから曲は付けやすかったですね。」


【そして彼女達は前を向く - 象眠舎 (旧:小西遼ラージアンサンブル)】 





シーンが変わったというか、角田がシーンを作った


――角田さんは、ものんくるでも詞を書いているんですよね。

[角田]
「そうです。ほとんど俺が書いてるね。」

[小西]
「角田の作詞は本当に天才的。」

[井上]
「日本のジャズシーンでも一番早くからそういう事やってたよね。」

[小西]
「ものんくるになる前に、角田隆太カルテットみたいな感じでボーカルの吉田沙良が入ってっていうのを見て「すげぇ!」って思っていて。その後ものんくるが出来て、俺もメンバーとして中にいたんだけど、当時はどちらかというと曲の方に意識がいっていたんです。でもその後ものんくるとして活動して色んな曲が出来てきた時に、すごい歌詞がまぁ出てくる出てくる(笑)それがすごい好きになって、俺がアメリカに行った頃にはただのファンみたいになってたね。」

[角田]
「あの時にそういう事やってる人は居なかったから、あれ成功しなかったら相当痛い人としてカテゴライズされてただろうなって気はするよ(笑)」

[井上]
「俺から見るとここ2、3年くらいで、角田くんを取り巻く環境というか理解してくれる人がすごい増えたなと思っていて。」

[角田]
「増えたね。ありがたいことに。」


――ジャズのシーンにいてもやっぱり変化があったんですか?

[小西]
「シーンが変わったというか、角田がシーンを作ったからね。」

[角田]
「おっ!すごい話になってきたね(笑) 」

[井上]
「最初にやるっていうことが一番難しいからね。後に続くことは簡単かもしれないけど。」

[小西]
「明らかに切り込み隊長だったから。でも角田的には結構自然なものだったよね。」

[角田]
「そうだね。やっぱりバンドやってたからね。」

[石若]
「今、ジャズ・ミュージシャンが歌の入った「バンド」をやるって事がすごい増えてるような気がするな。」

[小西]
「増えてるよね。それは世代的なものが絶対ある。角田がその先駆けで。俺がまだアメリカに住んでた頃にものんくるのツアーで一時帰国した時、角田と「日本面白くなりそうだよね」みたいな話をしたんだよね。ポテンシャルとしてはまわりにそんなのはゴロゴロしてるって。その頃確かに俺の中にもあったし、みんなの中にあったと思うんだけど、「ジャズ・ミュージシャンでもポップスをやりたい」っていう気持ちが。エスペランサ・スポルディングとかロバート・グラスパーとか形は違うけど、ああいう人たちも自分達が聴いてきたポップネスが色濃く出ている音楽、ポップって言っていいのか分からないけれど、歌に関する物をやりたいっていうところから発生している音楽がかなり増えていた。アラン・ハンプトンとか、グレッチェン・パーラトとかベッカ・スティーブンスとか。カテゴライズとしてはジャズの方面だけど、聴く人が聴いたらハイブリッドな歌ものっていう。それはアメリカにいる間もすごく感じていたし。」

[小田]
「ベッカもジャズなんだ?」

[小西]
「まぁジャズだよね。」

[石若]
「最初は超ジャズシンガーだったよね。」

[小西]
「プロデュースとかまわりにいるミュージシャンがジャズで、レコーディングもジャズっぽい雰囲気になっていって、っていう文脈としてジャズの方になってるよね。彼女自身もニュースクール出身だし。でも、今の朋美の発言が代表するように「あれジャズなの?」ってなる人がいてもおかしくない。」


――クラックラックスも「ハイブリッドな歌もの」としても聞けそうですよね。

[小西]
「それは是非お客さんに訊いてみて欲しいな。」

[井上]
「クラックラックスは、それぞれが曲を書いてきてみんなで演奏しますが、自分達の音楽がどのジャンルに当てはまるのかは誰も意識していないと思います。なので、ハイブリッドな歌モノという言葉も、それは聴いてくれた人達がどう感じるか判断するものだと思います。 」

[小西]
「昔の人たちがジャズとかフュージョンとかしっかりカテゴライズされていたのは多分時代の流れがあって。有名な話だけど、チャーリー・パーカーだって現代音楽の勉強をすごいしてたけど、最後までビ・バップのプレイヤーだった。早くに死んじゃったけど、表現する可能性が広かったらパーカーは絶対ジャズじゃない作曲もやっていたと思うし。そうやって間口が広がっていった結果、俺たちはもうジャズっていうフォーマットでやらなくて良いし。もう全部あるから。聴いてきた音楽の中にそれが散らばっていて。」

[角田]
「今はもうパンクの代名詞になってるイギー・ポップがニューヨークに出始めた頃にライブを観に行った人に聞いたんだけど、「誰もその場でパンクっていう言葉を使っていた記憶が無い」って言ってた。パンクっていうのは後から付けられた名称なんだよねって話をしていて。僕達が今やってる音楽にも後々何か名前が付いたらいいよね。」


【「Goodbye Girl」PV CRCK/LCKS】





CRCK/LCKS 1st EP「CRCK/LCKS」Release Live

【東京】
出演:CRCK/LCKS
GUEST ACT : WONK
日時:2016年6月16日(木) 開場19:00 開演19:30
会場:月見ル君想フ(青山)
料金:予約2,500円/当日3,000円(いずれも+1ドリンク500円)
ご予約・お問い合わせ:http://www.moonromantic.com/?p=30067


【名古屋】
出演:CRCK/LCKS、THE PYRAMID
日時:2016年6月20日(月) 開場18:00 開演19:00
会場:TOKUZO(名古屋・今池)
料金:予約2,500円/当日3,000円(いずれも+1ドリンク)
ご予約・お問い合わせ:http://www.tokuzo.com/schedule/2016/06/620crcklcksthe-pyramid.php


【大阪】
出演:CRCK/LCKS andmore!!!
日時:2016年6月21日(火) 開場18:00 開演18:30
会場:LIVE SQUARE 2nd line(大阪)
料金:予約2,300円/当日2,800円(いずれも+1ドリンク600円)
ご予約・お問い合わせ:http://www.arm-live.com/2nd/index.html#ticket



New Album

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Title : 『CRCK/LCKS』
Artist : CRCK/LCKS
LABEL : Apollo Sounds
NO : APLS1605
RELEASE : 2016.4.20

アマゾン詳細ページへ


【MEMBER】
小西遼(sax,etc)
小田朋美(vocal­,keyboard)
角田隆太(e.bass)
井上銘(guitar­)
石若駿(drums)



【SONG LIST】
1 Goodbye Girl
2 いらない
3 簡単な気持ち
4 スカル
5 坂道と電線
6 クラックラックスのテーマ







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【CRCK/LCKS】

2015年4月に結成。
同年6月、菊地成孔が新宿ピットインで開催するイベント"モダンジャズディスコティー­ク"に出演し大きな反響を受ける。メンバーは2015年よりアメリカでの音楽留学を終え日本での活動を本格化し注目を集­めるリーダーの小西遼(sax,etc)/ 2013年にアルバム『シャーマン狩り』でデビューした作曲家の小田朋美(vocal­,keyboard)/ 2015年にフジロック出演を果たし今後の活動が注目されるバンド"ものんくる"のリ­ーダー角田隆太(e.bass)/ リーダーアルバムを既に2作リリースしている人気若手ギタリスト井上銘(guitar­)/ メンバー最年少ながら数多くのレコーディングやライブに出演、天才ドラマーとも呼び声­の高い石若駿(drums)

5人の若き才能が結集して作られるハイクオリティなポップミュージックは耳の早い音楽­ファンの間では既に話題となっている。2016年4月、パーカッショニストのASA-CHANGをゲストに招き、待望の1s­tミニアルバム『CRCK/LCKS』をリリース。


CRCK/LCKS BLOG

類家心平インタビュー:インタビュー / INTERVIEW

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類家心平インタビュー


類家心平というトランペッターは僕の中では不思議な存在だった。日本のジャズの中心にいるようで、その演奏の場はポップスやバンドなど様々な音楽を渡り歩いている。しかし「ロックなサウンド」という謳い文句の新作を引っさげた彼にインタビューしてみると、その立ち位置が明らかなジャズ・ミュージシャンであることを痛感した。今回は新譜についてはもちろんバンドメンバーについて、スタジオワークについて、そして新譜でも取り上げたマイルス・デイビスまで盛りだくさんに語ってくれた。

2016/2/22 @JJazz.Net
インタビュアー:花木洸 HANAKI hikaru(音楽ライター)





――まずバンドのメンバーを類家さんから紹介していただけますか。

[類家心平]
「僕のバンドは元々4人でやっていたんですよ。ドラムとベースは今と一緒なんですけどピアノがハクエイ・キムさんとやっていてギターはいないっていうカルテットでずっとやっていて。ドラムと鉄井(孝司)さんとハクエイ・キムは最初池袋のマイルス・カフェ(現SOMETHIN' Jazz Club)がジャム・セッションをやっていて、そこに行ったんです。その時はハクエイ・キムと鉄井孝司と今はJazztronikでドラムを叩いている天倉正敬っていう人がホストバンドに入っていて。その2人が良かったのでその2人とバンドをやろうと思って。

ドラムはもうその前から決めていたんですよ。吉岡大輔っていう人は、彼のバンドはファンクをやるバンドだったんですけど、彼は若い時から僕なんかよりキャリアの長いドラマーで。彼はスウィングのビートがカッコ良くて、尚且つファンクみたいなグルーヴのビートも出せるって人で。もうドラマーはこの人にしようって決めていました。それで4人集めてバンドが始まりました。その後サックスを入れたりしてた時期もあったんだけど、最終的には4人でやりましょうって事になり、1枚目の『Distorted Grace』と2枚目『Sector b』はカルテットで作りました。

 そしたら今度はハクエイ・キムがユニバーサルに入ってすごい売れちゃったのでスケジュールがあわなくて。どうしようかなと思って、ハクエイくんは自分のやりたい事を思うようにやった方がいいと思ったので、ピアノを替えようかなと。それでちょうど地元のジャズ・フェスティバルに出るタイミングで中嶋錠二に替わって。錠二は青森の八戸市出身で地元が一緒なんですけど、そこにいる時から知っているわけではなくて。三輪裕也君がやっていたInformel 8(アンフォルメル ユイット)ってバンドがあったんですよ。dCprGってバンドでサックスを吹いている高井(汐人)君とか、僕が入った時はドラムの田中教順君がいたりして結構メンバーは替わってるんですね。今は休止状態なんですけどそのバンドは作曲家がいるバンドなんですよ。三輪くんっていう演奏はしないんだけど曲を提供するっていう人がリーダーで。そのバンドに錠二がいてそこで出会って。すごくいいなぁと思ってデュオとかはよくやっていて、じゃあバンドでも弾いてもらおうと思って入ってもらったっていう感じです。

 その当時ちょっとエレクトリックな事をやりたいなと思っていたんで、アコースティックなものとエレクトリックなものを繋いでくれる要素がもうちょっと必要だなと思っていたんです。なのでそこを上手く繋いでくれるギターを入れようと思って。ギターを入れるなら田中"tak"拓也にしようと思っていたので声を掛けました。田中拓也はボストンのバークリーに行った後ロサンゼルスに渡ってロスでずっと仕事をしていたんですが、彼が向こうに住んでいる頃日本に帰ってくるとJP3っていうバンドをやっていたんです。それは田中拓也と中村亮っていうドラムに、今は"Big Yuki"として活動してる鍵盤の平野雅之の3人でやっていたバンドで、そのバンドと対バンしたんです。もう10年以上前ですね。その時にすごく良いなと思って、そこからちょこちょこ観たり聴いたり一緒に演奏したりしていました。彼は結構ポップスとかもやってたりもするんですよ。替わりになる人がいないサウンドというか、ちょっと変わってますよね。」


――このバンドでは、曲は最初に何かビジョンがあってそこに近づけていく感じなんですか?それともセッション的に?

[類家心平]
「それはどっちとも言えないというか、どっちもありますね。特に最近はよりバンドっぽい感じになって来たから。結構ジャズのバンドってセッションっぽい感じのバンドが多いじゃないですか。あんまりそうもなりたくないんですよね。コンポーズ自体は僕がほとんどやっているので、DTMでデモとか作っていって「こういう感じで」みたいなやりかたもするし。それを持って行ってリハーサルをして、みんなから色々アイディアが出てきてデモとは違う方向に行くっていうこともあるし。

サウンド自体は自分の頭の中に最初にあるものがあるんだけど、それをこのメンバーでやるとこのメンバーのサウンドになるっていう。だからどっちが先っていう意識は無いですね。ただ音楽的に一緒にやっていくっていう上で好きなメンバーを集めたっていう所はあります。やっぱり僕はジャズのインプロビゼーションが根底にある人、そしてその中で出てくる音楽っていうものに魅力を感じるので。だからこのバンドの曲はリズムがちょっとロックなビートだったり、コード感っていうものがビ・バップに比べたら細かく割り振りされているわけではないんだけど、やっぱりロックの人がやるインプロビゼーションとはまた違うサウンドになるんです。僕はそっちの方が好きだから、やっぱりジャズをやっている人たちでバンドを作りたかったんですよね。」


――このバンドは結構サウンドが「ロック寄り」って言われることが多いじゃないですか?今のジャズって「ヒップホップ寄り」とか「R&B寄り」が増えてる気がするんですけど、このバンドのサウンドが「ロック寄り」になっていったきっかけっていうのはどこにあると思いますか?

[類家心平]
「確かに世の流れとしては全体的にレイドバック感がありますよね(笑)でも僕たちは自分の中にあるものを表現したいわけじゃないですか。それは絵を描く人でも写真を撮る人でも。その媒体が何であるかっていうことの違いであるわけなんですよ。アウトプットするときにR&Bとかヒップホップとかそういうものが自分のフィルターの中にある人はそれが自ずと出てくると思うんです。僕もそれが無いわけじゃないんだけど、そこを使った自分の表現っていうのが上手く出来ないんじゃないかなと思ってるんですよ。割りと破壊的な物を作りたいので(笑)それはヒップホップでもやりようはあると思うんだけど、どっちかというとロックっぽいサウンドの方が自分の表現したいものに合ってるっていうだけのことだと思うんですね。」


――たしかに類家さんって、実は自分のリーダー作ではクラブに近いようなサウンドってやってないんですよね。僕の中では類家さんの世代って、クラブとジャズがすごい近い世代っていうイメージなんですよ。類家さんの中では「クラブ」の影響ってありますか?

[類家心平]
「それはありますね。クラブのフロアでお客さんが立っている感じとか、逆にピットインみたいなジャズのライブハウスでみんな座っている感じとか僕はどっちもやっているから、どっちもやっていて良かったなっていうのはすごくあるんですよ。座っていても聴けるし立っていても聴けるっていうそこのギリギリのところの音楽。そのギリギリのところを常に演奏で出せるようになるっていうか。よくクラブで夜中のギグとかやってましたけど、ああいうのが無いと出せないものっていうのもあるんですよ。

だから僕からすると今の若い人のほうがちゃんと「ジャズ」をやっているような気はすごいしますね。やっぱり当時もガチガチのジャズのセッションに行く人とクラブに行く人っていうのは別れてはいたんですけど、TOKUさんみたいにたまにクラブの方にアプローチしてくれる人達がいたのが大きかったですね。

当時僕が行っていたのはマイルス・カフェもそうだし、渋谷のTHE ROOMってところでそういうセッションがあって。曲をやるわけじゃなくてファンクとかソウルとかでセッションをして、ラップをする人もいるし、歌を歌う人もいるし、ボイス・パーカッションをする人もって、本当に色んな人が来ていたんです。ジャム・セッションっていうよりは所謂オープン・マイクですよね。そういう中でトランペットを吹くとなると、場を力ずくで持って行かなきゃいけないわけじゃないですか(笑)そういうスキルはやっぱり付くんじゃないですかね。お客さんの反応もそういう事に対してシビアだし、ジャズとは違う緊張感があって。ジャズのセッションだとキーがどうとか、曲を知っているとか、ツー・ファイブのフレーズが吹けるとかそういう所に重きを置くんですけど、それが良かったりも悪かったりもするので。そういうところを引っぺがえしちゃって、取っちゃっていわゆるシンプルなフォームの中でどれだけ自分を出せるかっていう事だけになってしまうので。聴いている方もそういう熱量を求めて来る部分もあるから。」


――類家さんが書く曲はいわゆるビ・バップ的なコーダルな曲というよりは、コード一発のものであったりモーダルな雰囲気の曲が多いですよね。

[類家心平]
「そうですね。自分はその方がより自由になれるというか、やりやすい。結局音楽はコミュニケーションをとらなきゃいけないじゃないですか。それは演奏しているメンバーともだし、聴いているお客さんともだし。そのコミュニケーションを音楽の上でとっていく時に、やっぱりビ・バップは正直言って僕には難しいんですよね。その中でコール&レスポンスというかメンバーと会話をしながら音楽を構築していければいいんだけど、やっぱりそれはすごく難しいし。あんまりゲームっぽかったりスポーツっぽくなるよりは、お互いが聴き合っていけた方が良いなって思った時に、フォーマットとしてこういう形になるんですよね。」


――さっきも出たんですけど、曲はどうやって書いてバンドに持って行くんですか。

[類家心平]
「色々ですね。メロディを先に作ることもあるし、コードを先に作る事もあるし。それを一回Logic(DTMソフト)に打ち込んでみて、「こんな感じか」って譜面を書いてデモを作って持って行ってという感じです。DTMを使っているのは僕の場合はそんなに器用じゃないんで、例えばテンポが早い曲だとコードを押さえていくのが大変だけど打ち込みならいける、とかただ単にそういう理由です。打ち込みだとテンポも自由に変えられるし、デモとしての機能が優秀なので打ち込んでしまうっていう感じですね。でもドラムの打ち込みは難しくてやっぱり(仮)になっちゃいますね。リズムだけどっかからサンプリングしてデモを作ることもあります。」


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――このアルバムや楽曲のタイトルはどうやって決めているんですか?

[類家心平]
「僕の場合は意外と何でも良いというかニュートラルな状態にしておきたいんですよね。せっかくインストゥルメンタルの音楽なので、歌詞が無いわけじゃないですか。せっかく自由な感じでみんな聴けるのに、そこにラブソングみたいなタイトルが付いちゃうとその曲はもうラブソングとしてしか聴けないじゃないですか。そういう所はニュートラルにしたいな、という部分があるので変な言葉を。適当かもしれないですね(笑)前作の「Guru」とかはちょっとヒップホップぽい曲でちょうどGuruが亡くなった時期だったからとか、そういうところからタイトルを付けることもあります。」


――今回のアルバムでマイルス・デイヴィスの「Maiysha」を取り上げた理由を教えて下さい。

[類家心平]
「単純に好きだった曲なんですよね。それとこのバンドに合うかなと思って。マイルスも何回か録音が残っているんですけど、マイルスがやるとグダグダだけどカッコ良いんですよね。ライブでカバーしている人は結構いるんだけど、やっぱり比べるとカッコ悪いんですよ。普通にファンクっぽい感じになっちゃうと、みんな上手いから。この曲はすごい単純な曲だから、あんまりちゃんとやっちゃうとすごいカッコ悪くなっちゃうんです。マイルスって全般的にそうですけど、とくにキャリアの後半の方は本当に呪術的というか呪いのような不思議な感じがどうしても解明できなくて。だからそれを自分たちなりにやれれば良いなって感じで。」


――類家さんがマイルスで聴くのは割りとエレクトリックのところが多いんですか?

[類家心平]
「いや、実はエレクトリックになる寸前というか70年代の休止する前とか60年代後半とかが一番好きですね。エレクトリック・マイルスを取り上げてる人って、今はそんなにいないけど多分昔はいっぱいいたと思うんです。ウィントン・マルサリスみたいな事ってやろうとしても出来ないんですけど、マイルスっぽい事って出来ちゃうんですよ。そこに落とし穴があって。なんとなく出来てる感じになるんだけど、やっぱりああはならないという。だから自分もワウを使ったりするんですけど、なるべく遠ざかるようにしたいなとは思っていて。」


――類家さんはマイルス・デイビスからジャズに入ったんですよね。

[類家心平]
「最初はやっぱりマイルスから入りましたね。でもそれはエレクトリックなものではなくて50年代の所謂「マラソンセッション」です。トランペット自体を始めたきっかけは、最初兄がブラスバンドでトランペットを吹いていて。そこが結構力を入れている学校で、小学校のブラスバンドなのに70人くらいいたんです。先生がいろいろ研究しているような人で、もの凄く生徒を勧誘してくるんです。で、僕も兄がやってたらその先生に勧誘されて入って。ドラムがやりたかったんですけどね、ドラムが出来なくて。でもトランペットは最初から音が出たんですよ。トランペットは歯並びとかにもの凄い影響される楽器だから、最初に出ないとみんなやめちゃうんです。僕はたまたまトランペットが自分に合ったのでずっと続けることになってしまいましたね(笑)」


――類家さんがトランペットまわりで使っている機材の事を聴いてみたいなと思っているんですけど、録音の時はエフェクトは足元で作っているんですか?

[類家心平]
「そうですね。踏み忘れたやつとかは後から掛けたりもしたんですけど、ほとんど足元です。今はBOSSのME-80っていうギター用のマルチ・エフェクターでほとんど作ってますね。前は普通にVOXのワウとBOSSのRE-20っていうテープエコーを再現したディレイペダルと、って組み合わせて使っていたんですけど。管楽器でマイクで使うとギターに比べて入力のゲインの差がもの凄いあるんですよ。そうするとワウを踏んだ瞬間にゲインが跳ね上がってしまうのでミキサーを挟んでワウを踏む時は入力を絞ってとかやってたんですけど、マルチを使ってみたら楽だなと。おかげでフィルター系のエフェクトも使うようになったし。今はマイクから足元のミキサーに入れて、そこからエフェクターにいれて、ダイレクト・ボックスで卓にっていうシステムになっています。」


――エフェクターはどこからアイディアを得るんですか?

[類家心平]
「ミュージシャン同士でもタブゾンビ君は結構エフェクターを使うから情報交換をしたりしてます。僕が好きな近藤等則さんもエフェクトを沢山使っているのでライブを観に行って見せてもらったりとか。ニルス・ペッター・モルヴェルが来日した時も足元のエフェクトを見せてもらったりしました。彼はGUITAR RIGっていうパソコン上で使うギターアンプ・エフェクトのシミュレーターで音を作っていて足元もそれのコントローラーだけでしたね。あの人はエフェクトが掛かっているマイクと普通のマイクの2本を使っているんですよ。たぶんエフェクターを通すと生の音が痩せるっていうことだと思うんですけど。ツアーだからかもしれないですけど「これだけあれば良いんだ」って言っていて。まぁパソコンとコントローラーだけ持って来るだけでいいですしね。」


――今回のアルバムはほとんど一発で録ってるんですか?

[類家心平]
「そうですね。ほとんど1テイク目が使われてますね。録音は1日半くらいでやっていて、あと4曲位録ったので全部で14、5曲録っていて。」


――今回は全体的に音がクリアなんだけど、歪んだ感触が足されているのが面白いなと思って。いわゆるジャズのアルバムの音っていう感じでは無いじゃないですか。

[類家心平]
「そうですね。このバンドはライブの時からそういうちょっと歪んだ様な音像なので。特にギターが入ってからは、スウィングの曲をやっていても変なギターが裏に入ってるみたいな。そういうところもバンドのサウンドになって来ているので。単純にそのまま録ったっていう感じですね。」


――前回がライブ録音で今回がスタジオ録音じゃないですか。その違いっていうのは意識したりしますか?

[類家心平]
「そうですね。曲によってはスタジオじゃなきゃ出来ないような部分もあるので。インタールード的な立ち位置の曲とかはあんまりライブでは出来ないものだったりするので。3曲目の「Polyhedron Girl」みたいにトランペットを重ねている曲もあるんです。ミックスもマスタリングも立ち会いましたね。そこで音がだいぶ変わりますから。」


――具体的に何かリクエストした事はありますか?

[類家心平]
「さっきも話したけど、あんまりジャズっぽい感じにならないようにっていう事は意識しましたね。今ってヒップホップを生でやっているバンドとかあるわけじゃないですか。そういう物を聴いてきているから、サウンド的な面ではそういう今っぽい部分を意識しました。良い音の基準って時代によって変わって来ているから。で、今はみんなコンピューターに入れて聴くから、他のポップスとかと並べて聴いた時に差が出ないようにガッツリいけたらいいなって。」


――今回はPVも作ったんですね。

[類家心平]
「そうですね。6曲目の「Danu」って曲を池袋のKAKULULUっていうお店で撮りました。ジャズはアドリブだからPVを作るのは難しいんですが、最近はジャズのミュージシャンでも作る人が増えている印象です。今はみんなYouTubeしか観ないですからね。でも今のジャズ・ミュージシャンってなんだかんだ言ってみんなジャズだけじゃなくて色んな物を観たり聴いたりしてるじゃないですか。だから割りと感覚がフラットになって来てるのかなっていう。その方が健全というか健康的だと思いますね。なるべくジャズっていう囲いを取り払った方が良いと思います。」


Shinpei Ruike (RS5pb) / DANU (Official Music Video)



――類家さんは普段どんな音楽を聴きますか?

[類家心平]
「トランペットの物はやっぱり気になりますね。最近だとアンブローズ・アキンムサリとかクリスチャン・スコットとか聴きますし。昔のものも聴くし。」


――クリスチャン・スコットもレイドバックしている音楽というかは...

[類家心平]
「そうなんですよね!あの人も意外とロックが好きなんだと思います。」


――じゃあ今気になるトランペッターと言ったらやっぱりそのあたりの人ですか?

[類家心平]
「いや、広瀬未来じゃないですか。すごいですよ彼は。今日本のトランペットの若い人で上手い人がどんどん出てきていて、石川広行君とか市原ひかりちゃんとか。今の若い人ってなんか世代的な意識が強いですよね。ジャズの行く末を危惧してるのかみんな意識が高くて礼儀正しくていい人が多い。でもみんなで集まって何かやろうっていうアクションはすごく良いと思います。昔はもっといい加減だった気がするんですけど(笑)

世代で分けるのもどうかと思うけど、やっぱり同じ物を観て同じものを聴いてっていう経験は大きいですからね。僕のバンドもだいたい同じ世代の人で組んでいるから「言わずもがな」で伝わる共通の認識があったりしてやりやすい部分はもちろんあります。でも僕が板橋文夫さんのバンドでやってもすごく面白いし、そういう世代を超えてっていう事もあるから。一概には言えないですね。」


――最後にどうしても訊きたいことがあるんですけど...類家さんってトランペットを吹く時に、結構ほっぺたが膨れるじゃないですか。あれは訓練によるものなんですか?

[類家心平]
「あれは勝手に膨らんできちゃったんですよ(笑)僕は自衛隊の音楽隊でずっと吹いてたんですけど、その時は膨らませて無かったんですよ。その頃はマーチとかクラシックとか色んな曲を吹かなきゃいけないから、セオリー的には膨らませちゃいけないんです。でも自衛隊を辞めてジャズだけやろうと思って、出したい音のイメージに近づけて行こう行こうとしてたら段々膨らんできちゃったんです。でもまぁ普通に吹けてるからいいやと思ってそのままにしてたらどんどん膨らんできて(笑)でも日野さんとかも膨らませますよね。結局口の中の容積、息の入る量が変わるから出てくる音もちょっと変わるはずなんですよ。意外とトランペットって唇で音を出すからイメージが大事で。そうなりたいって思っていると勝手に変わってくるんですよ。」


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New Album

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Title : 『UNDA』
Artist : 類家心平 RS5pb (Ruike Shinpei 5 piece band)
LABEL : T5Jazz Records
NO : T5J-1012
RELEASE : 2016.3.23

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【MEMBER】
類家心平 - trumpet
田中 "tak" 拓也 - guitar
中嶋 錠二 - piano, keyboards
鉄井 孝司 - bass
吉岡 大輔 - drums

2015年録音


【SONG LIST】
1 Unda
2 Haoma
3 Polyhedron Girl
4 Invisible
5 Es
6 Danu
7 Maiysha
8 Tupamaros
9 Kyphi
10 Pirarucu

All songs written by Shinpei Ruike except "Maiysha" written by Miles Davis.







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【類家心平】(トランペット)

1976年4月27日、青森県八戸市生まれ。10歳の頃にブラスバンドでトランペットに出会う。高校生の時にマイルスデイヴィスの音楽に触れジャズに開眼する。高校卒業後海上自衛隊の音楽隊で6年間トランペットを担当。自衛隊退官後、2004年Sony Jazzからジャム・バンド・グループ「urb」のメンバーとしてメジャー・デビュー。タイ国際ジャズフェスティバルに出演するなど注目を集める。 「urb」の活動休止後に自身のユニット「類家心平 4 piece band」を主宰。ファースト・アルバム「DISTORTED GRACE」を2009年にリリース。2作目「Sector b」を菊地成孔氏のプロデュースで2011年にリリース。その後メンバーチェンジを経て「類家心平 5 piece band」(RS5pb)となり2013年にT5Jazz Recordsよりライヴ盤「4 AM」をリリース。ド迫力の演奏内容に加え、Pure DSDによる高音質録音の話題も加わり、CDのみならずハイレゾ配信で大きな話題を呼ぶ。

その他「菊地成孔ダブセクテット」、「dCprG」、元「ビート・クルセイダース」のケイタイモ率いる「WUJA BIN BIN」や「LUNA SEA」のギタリストSUGIZOが率いるユニットにも参加。板橋文夫や山下洋輔、森山威男などベテランジャズミュージシャンとの共演も多数。またジャズを題材としたアニメ「坂道のアポロン」の劇中のトランペットを担当するなど、活躍の幅を広げている。


類家心平 Official Site

T5Jazz Records

石若駿インタビュー:インタビュー / INTERVIEW

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石若駿インタビュー


ジャズ・ドラマー石若駿。1992年生まれのこのドラマーは10代で日野皓正、石井彰、金澤英明、TOKUなどベテランに見出されて活動を共にしてきた紛うことなき逸材だ。ジャズ・ドラマーとして活動しつつも高校から日本のクラシックのメッカとも言える東京藝術大学で学び、近年はテイラー・マクファーリン等ビートシーンからの注目も集めるというまさにジャンルを軽々とまたぐ彼がいったい何を考え、彼には何が見えているのか。同世代ながら僕はかなり遠い存在のように思っていたのだけれど、インタビューが始まると「僕と同い年なんですよね?やったぁ!」と生い立ちから、初のリーダーアルバム、さらには石若が今"面白い"と思っている音楽までたっぷりと語ってくれた。

2015/11/30 @JJazz.Net
インタビュアー:花木洸 HANAKI hikaru(音楽ライター)





――まず石若くんがドラムを一番最初にはじめたきっかけは?

[石若駿]
「まず両親が結構音楽に絡んだ仕事をしていて。父親が高校で音楽を教えていてブラスバンドとかをやっていたんですよ。母親は小さい子たちにピアノを教えていて。だから家の中ではクラシックとかジャズとか70年代~80年代のポップスみたいな音楽がずっと流れていて。それである日父親に「ライブ観に行くぞ」って言われて観に行ったのが、森山威男さんと松風紘一さんのデュオだったんですね。それが4歳くらいの時です。ドラムセットとサックスだけ置いてあるステージで、1時間半とか2時間とかぶわーってずっとフリージャズをやっているのを一番前の席で観て。そのステージでの森山さんに圧倒されて一番最初にドラムに興味を持ちました。」


――へぇー。最初がフリージャズなんですね。

[石若駿]
「それでおもちゃのドラムセットを買ってもらって遊んで叩いているうちに、1997年にX JAPANが解散するんですね。そのX JAPANが解散したっていうニュースでYOSHIKIがドラムをぶっ壊したり叩いている映像にまた衝撃を受けて。そこで本格的にやりたくなってエレキドラムを買ってもらいました。

それからしばらく家で一人で叩いてたんですけど、小学校4年生の時に新聞で「札幌・ジュニア・ジャズスクール」っていう小学生の為のジャズのビッグバンドのメンバーを募集している記事を見つけたんですね。「これに入ったら人と一緒に出来るな。しかも音楽やってる同世代とかと一緒に出来るな。」と思って応募してオーディションを受けて。それまではX JAPANとかhide(X JAPANのギタリスト)の音楽とかばっかり聴いていたんですが、ジャズのビッグバンドに入ってからだんだんジャズを聴くようになっていったっていう。」


――じゃあジャズを知るのとドラムをはじめるのと、どっちが先かというと...

[石若駿]
「ドラムが先ですね。いわゆるドラム少年だったと思います。小学校の低学年の頃はずっとロックばっかり聴いてました。X JAPANのアルバムを全部聴いて全部叩けるようになったらhideのソロ・プロジェクトにまたどっぷりハマって、そこからX JAPANやhideが影響を受けたミュージシャンを掘り下げていって。KISSの来日コンサートの映像を借りてきて観たりとか、hideがライバルとか言ってたマリリン・マンソンの音楽も気になって聴いたり、マンソンからスリップノットを聴いたり...」


――へぇー!すごい意外です。石若くんはずっとジャズをやってるのかと思ってたから。

[石若駿]
「まぁそれは小学校の3年生までで、4年生でビッグバンド入ってからまた大きく変わりました。ビッグバンドは道内から本当に音楽がやりたい子達が集まっている所だから、ほんとにみんな音楽が好きで嫌々やってる子は一人もいない、みたいなところだったんです。結構演奏の機会もあって、「サッポロ・シティジャズ」の前身になった「サッポロ・ジャズ・フォレスト」っていうフェスに出たりとか。その頃は北海道に倶知安ジャズ・フェスティバルとか、室蘭ジャズ・クルーズとか、いわみざわキタオン・ジャズ・フェスティバルとかジャズ・フェスティバルがいっぱいあって。それのオープニング・アクトに必ず僕らが呼ばれて行って演奏して、プロのジャズ・ミュージシャンとも交流があってっていう夏を毎年過ごしていたんですね。

そんな中で小学校5年生の時にハービー・ハンコックのトリオが来て、そのトリオのオープニング・アクトを僕らがやって。その前日にハービー達がバンドクリニックをしてくれた時にハービーが目をつけてくれて、「なんでお前はそんなドラムソロが出来るんだい?」って話しかけてくれた体験とかから段々と「ジャズで頑張ろう」っていうパワーをもらいました。それが夏で、冬にも同じようなコンサートがあって。その冬は日野皓正さんのクインテットが来て、その時も同じようにバンドクリニックがあって日野さん達と出会って。そこの出会いが今にも続いているような感じですね。」


――じゃあやっぱりジャズドラマーになっていったのはビッグバンドに入ったのが一番大きいきっかけというか。

[石若駿]
「そうですね。やっぱりプロのミュージシャンとの交流が沢山あったっていうのは大きかったです。マーカス・ミラーも来てオープニング・アクトをやらせてもらったし、僕らのビッグバンドは熱帯ジャズ楽団とも交流があったりして。そういう色んなタイプのミュージシャンと交流があって。」


――ちなみにジャズを始めてからは、やっぱりジャズを聴いていた?

[石若駿]
「そうですね。小学校の高学年の頃はバディ・リッチ・ビッグバンドとかいわゆるビッグバンド・サウンドの音楽を沢山聴いていたんですけど、だんだんラテンにハマっていって。よく『モダン・ドラマー・フェスティバル』っていう色んなドラマーが集まったDVDを買っていたからそれでアントニオ・サンチェスとかオラシオ・エルナンデスを観たりして彼らの演奏にハマって。

今現在ニューヨークというかアメリカでどういうジャズが流行っているのかっていうのに興味を持ち始めて見事にハマったのが中学校1,2年の頃ですね。ちょうどその頃東京JAZZでハービー・ハンコックのバンドでブライアン・ブレイドが来てたり、ダイアン・リーブスのバンドでグレッグ・ハッチンソンが来てたりっていう、いわゆる現代のアメリカのジャズ・ミュージシャンをテレビで観るわけです。それにまたハマっちゃって。タワーレコードに行ってブライアン・ブレイドの参加しているCDをひたすら買ったりっていう時期もありました(笑)だから中学時代にジョシュア・レッドマンのカルテットのCDも全部買ったし。僕、ちょうどロイ・ハーグローヴのRHファクターの1枚目が出た時に<なんだこれは!って買っていたんですよ。でも日本の同世代でリアルタイムでずっと聴いてる人ってなかなかいなくて、音楽の話があうミュージシャンって大抵年上なんですよね(笑)」


――それで、中学校を出て東京藝大の附属高校に入るわけですね。僕はそこが結構気になるんです。決して簡単に入れる学校では無いし、ここまでの流れがあってどうしてクラシックの勉強をしようと思ったんですか?

[石若駿]
「やっぱり家庭が音楽一家だったことが原点にあって。クラシックも身の回りに溢れていたし、母親がピアノの先生で僕も4歳くらいから母親にピアノを習っていたからクラシックにもずっと繋がっていて。
小学校6年生の時に日野さんに「お前は中学校卒業したら俺のバンド入れよ」って言われて、その時はポカーンと「は、はい」みたいな感じだったんですけど、自分で色々考えて「高校には行った方が良いよな」って(笑)でもこれからも日野さん達とずっと一緒にやりたいからその為にどうしようって考えたのが東京に行くことだったんですね。わざわざ東京に行くんだったら普通の勉強じゃなくて音楽をちゃんと勉強したいな、と思っていたら藝高を見つけて、「あ、ここに入ったらオーケストラも授業にあるし、藝大の先生が来て専門実技のレッスンも毎週受けられるし最高じゃん!」と思って。そのために中学校の3年間はクラシックのレッスンを受けたり、時にはジャズとかドラムを封印してクラシックの奏法とかソルフェージュの勉強をしたりしてすごい頑張りました。とにかく東京に出たいっていうのと、音楽の根本的な理論とかクラシックを学んでる同世代達と一緒に勉強したいなって思って。それで東京に行けたら好きなミュージシャンとも一緒にジャズが出来るじゃないかっていう。今思えばすごいポジティブな考えですね(笑)」


――だって定員が40人とかですよね?

[石若駿]
「そうです。しかも楽器ごとの定員ではないから、僕が5年ぶりの打楽器での入学者でした。」


――やっぱり東京に出てきたら全然違いました?

[石若駿]
「そうですね。まず一人暮らしがはじまってそれがもう最高で(笑)学校の授業終わったら高田馬場のイントロに行ってジャムセッションをしたりとか。あと当時はTOKUさんにお世話になっていて。TOKUさんは日野さんとはじめて出会った時にゲストで一緒に出ていて、上京してからもお世話になっていました。「今日ブルーノートに出てたロバート・グラスパーのカルテットがセッションに来るからお前も来いよ」って言われて夜中にセッションに行ったりとかして。そのTOKUさんに連れられて行った秘密のセッションみたいなのはすごい僕にとって良かったですね。(グラスパーのバンドの)ケーシー・ベンジャミンとかとも一緒に出来たし。」


――へぇー!それはいわゆるジャズのセッションに普通に入ってるんですか?

[石若駿]
「そう。普通にサックス持ってきてスタンダードの"Body & Soul"を一緒にやったりして。ロイ・ハーグローヴとも一緒に出来たし、ジャリール・ショウとかも一緒にやったし。面白かったですよ。」


――その一方、学校ではどんな事を勉強していたんですか?

[石若駿]
「学校ではオーケストラを勉強したり、マリンバを4マレットで現代曲を練習したりとか。まぁ卒業したいし藝大行きたいから学校も頑張ってました。高校は同級生みんなとにかく音楽を頑張っていて、授業が終わったらみんな練習に没頭するみたいな。ヘタしたらもう色んな仕事をしてる人もいたし、ヨーロッパのコンクールを目指してる人もいたし。今はもうみんなそれぞれが第一線のプレイヤーになっていて、たまに会って「最近どうよ?」って話をすると「N響でさ~」とかそういうビッグな話が飛び交ってます(笑)

そのかたわらで面白いやつらも沢山いて、文化祭になったら東京事変とか椎名林檎のコピーバンドやろうぜ、みたいな。そういうのもやりましたね。「青二祭」とか「閃光ライオット」みたいなバンドコンテストにも出たりとか。あと高校生ってみんなよくカラオケ行くじゃないですか?僕らのクラスもカラオケにめちゃくちゃ行ってたんですよ。だからポップスとかロックとかで良い曲ないかな?って探してたんです。自分で歌いたいから。その中で、くるりとかに出会ったりするわけですよ。」


――ちなみにその頃に今回のアルバムに参加メンバーにはもう出会ったりしてるんですか?

[石若駿]
「そうですね、金澤さんは小学校の時からなので。あとのメンバーもみんな僕が高校生の時からの付き合いです。吉本(章絋)さんのバンドで初めて演奏したのも高校2年生の春とかで、その頃にアーロン(・チューライ)も一緒に出会って。(中島)朱葉もその頃はまだ和歌山にいたから、僕が金澤さんと石井さんのトリオで夏休みとか冬休みを使ってツアーに行っていて、その時によく飛び入りしたり終わった後のセッションにいたりって感じでしたね。その時は朱葉もいたし、アルトサックスの早川惟雅くんとか、ドラムの中道みさきちゃんとかもいたし。井上銘くんとは鈴木勲さんのトリオとかOMA SOUNDでよく横浜で演奏してたし。(高橋)佑成はその頃まだ中学校1年生で。日野さんがやってる世田谷ドリームジャズバンドに僕がよく遊びに行っていて、彼は石井彰さんの弟子なんですけど<生徒に中学校1年生の男の子がいて、なかなかやるんだよ。>とか言われて紹介されたのが最初です。彼もすごい面白いピアニストになったからちょくちょく一緒にやっていて。」


――井上銘くんとか中島朱葉ちゃんはその後アメリカ、バークリー音楽院に行っちゃうんですよね。石若くんはアメリカに行こうとは考えなかったんですか?

[石若駿]
「僕は高校2年生の夏にバークリーのサマーセミナーに5週間行ってるんです。その時に寺久保エレナとか馬場智章とか曽根麻央とかみんな一緒で。バークリーに行こうっていう考えも少しはあったんですけど、藝高入ったし藝大行きたいなって。3年間でクラシックの勉強を終わりにするよりはもっと色んなことやりたいと思っていたからあんまり考えなかったですね。まぁ大学卒業しても本当にアメリカに行きたかったら色々考えるだろうな、と思ってたんですけど。」


――卒業した今はどうですか?

[石若駿]
「今はやっと<ジャズドラマー>になったわけですから、卒業を待っていてくれた人達のところに行って自分も頑張ろうと思ってます。でも、ここ最近はニューヨークから来ているミュージシャンとの交流がすごくあるから、もしかしたらこれから行くことになるんじゃないかな?とは思っています。例えば黒田卓也さんと交流があったりとか、大林武司くんも僕が中学生で彼が19歳の頃から一緒にやっているから。

大学を卒業した今は、大学の夏休みが続いてるみたいな感覚ですね(笑)「もう学生じゃないんだ」っていう「一社会人として、一アーティストとして」っていう自覚は徐々に芽生えて来てますけど。大学卒業したてって言ってもキャリア的に見たら結構年数重ねて来たから、下手なことは出来ないなっていうプレッシャーもあったりしますけど、より音楽に熱中出来ている感じです。例えば今回のアルバムのために考える時間とか、研究する時間とかが増えて。」


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――じゃあそろそろアルバムの話を。まずメンバーの事を聞いていきたいんですけど、今回のアルバムのメンバーは結構いつも一緒にやってるメンバーですよね?

[石若駿]
「その通りです。僕のバンドで誘う人っていうだけじゃなく、それぞれが色んな所で繋がっている人達っていう感じです。僕がメンバーを選ぶ時に考えることは、それぞれが持っている音楽性はもちろんだけど人間として好きな人達っていうのもあって。例えば演奏するだけじゃなくて何でも無い日にご飯を食べに行ったり、何でも無い日に飲みに行ったりっていう。仲間ですから。そういうのも僕は結構大事にしていて。演奏終わってすぐ<お疲れ様でした>っていうのは僕はあんまり好きじゃなくて。だからこのメンバーは結構強い絆で結ばれてる人達だと思ってます。」


――じゃあ今回のアルバムはこのバンドのイメージがあって、それから曲を書いたんですか?

[石若駿]
「僕のバンドって決まった編成っていうよりはコロコロ替わることが多くて。サックスが一本のカルテットの時もあれば、サックスとギターが入ったカルテットだったりとか。

だからまず曲を書いて、「この人のサウンドでこの曲やったら面白いんじゃないかな?」っていう風にして今回は振り分けたんです。あと「このメンバーだから」ってイメージして書いた曲もあって、それが「The Way To Nikolaschka」っていう曲でアルバムの一曲目です。「ニコラシカ」はお酒の名前なんですけど、このメンバーでよくお酒を飲みに行くお店の名前でもあって。そういうのも良い思い出だなって思ってつけたタイトルです。」


――なるほどね。僕はこのアルバムの曲はサックスがメロディをとるっていうのをイメージして書かれた曲が多い気がしたんですけど。

[石若駿]
「それはイメージしましたね。僕も色々考えたんですけど。朱葉とか吉本さんが持っているトラディショナルでバップなサウンドで僕の曲をやってくれたらいいなって。」


――今回はこの選曲とか曲順は全部自分で決めたんですか?

[石若駿]
「曲順は自分で結構悩んでわかんなくなっちゃったところで「こうじゃない?」って提案してもらったのがしっくり来たっていう。その中でも多少の前後はありましたけど。やっぱり客観的にみてもらったおかげで、聴いた人が気持ちいい並びになったと思います。」


――間に短い即興の曲が入っているのがいいですよね。

[石若駿]
「僕はもともとこの3人で即興をやりたくて。金澤さんと須川さんが一緒にいるのってレアじゃないですか。すごい高級な感じがするから。僕とベーシスト2人で面白い曲を作ろうかとも思ったんですけど、それよりも絶対この場で一発で即興をやるほうがいいなと思って。全部で3回録ったのをそのまま入れてるって感じです。これは全部一発録りで編集はして無いんですよ。」


――今回のアルバムタイトル『Cleanup』はどういう風に決まったんですか?

[石若駿]
「アルバムのジャケットを作ろうってなった時に、僕が参加しているJAZZ SUMMIT TOKYOのメンバーでもあるSrv.Vinciってバンドの常田大希くんがアートディレクションをしてくれて。録音をしたスタジオで撮ろうってスタジオに行ってケーブルを巻いて写真を撮ってその写真をまた加工して...って出来たのがあのジャケットなんです。あのジャケットと曲名を並べて見た時に「Cleanup」っていうのがイメージに合うなと思って。この言葉には「4番打者」って意味もあるしこれは良いなと。それにこの曲が一番4ビートを叩いているし、ジャズのアルバムって事で象徴的にも。」


――あのジャケット、James Blakeみたいでカッコいいですよね。

[石若駿]
「そうそう!僕、結構テクノとかエレクトロとかインディー・ロックみたいなアルバムジャケットがすごい好きで。そういう風にしたいなと思って常田くんにアートディレクションを頼んだんです。ちょっと攻めてみようかなと思って。レコードショップとかに行ってLPのジャケットを観ているとカッコいいじゃないですか。で、バンドTシャツだとジャケットがプリントされてるだけでカッコ良いやつってあるじゃないですか。だから今回はを目指して作りましたね。」


――曲名がなんだかユニークなんですけど、それについて教えて下さい。例えば「A View From Dan Dan」とか。

[石若駿]
「実はこの曲はこのタイトルになる前に<日暮里>ってタイトルがついていて。僕は日暮里のそばに住んでるんですけど、そこから谷中とか根津とか...いわゆる谷根千のちょっと下町な感じの景色とか雰囲気とかが好きで。「日暮里」ってタイトルにしようかと思ったんですけど、もっと具体的にしようと思って。日暮里から谷中銀座に行く手前に<夕焼けだんだん>っていう階段があるんです。そこから見える夕焼けが本当にきれいで。」


――へぇー。じゃあ「Professor F」は実在するんですか?(笑)

[石若駿]
「実在しますね(笑)藝大の人がみたらみんな分かっちゃう。僕が尊敬している先生で、ジャズドラマーとしてCDを出したけど、<藝大で学んだことを忘れるな>っていう自戒の意味も含めたタイトルですね。だからこの曲は藝大でも4年間副科で専攻したピアノを弾いています。」


――こうやって見ていくと曲のタイトルはみんな身近なところから来てるんですね。

[石若駿]
「そうなんです。僕が今までの人生で見てきたものとか。「Darkness Burger」も某ハンバーガーショップで曲を書いていて、それがロックなサウンドのために書いたっていうそれだけなんですけど(笑)「Into The Sea Urchin」もツアー中の出来事からついたタイトルだったりとか。」


――石若くんは曲は基本的に何から作りますか?

[石若駿]
「僕はコードというかハーモニーから作ることが多いですね。でも基本的にピアノで作るので、メロディとハーモニーを一緒に組み立てていってっていう感じです。

でも今回レコーディングして気づいたのが、ドラムのイメージが全く無いなって事で。このアルバムの曲は昔作った曲も多いし、あんまりバンドで演奏されなくて自分の構想だけのものが多かったので。例えばアルバムのコンセプトが「ビート物のアルバムを作る」とかだったら「ドラムがこういうビートでそれに合うハーモニーを」って考えたり、人のバンドで演奏する時は「この人はこういうサウンドだから、こういうのが合うな」とかイメージが湧くんですよ。だけど自分のこういうサウンドに対してどうしようっていう。そうやって悩んだ結果こういう風な演奏になったから、自分の曲に対して新しい感覚がつかめたのは今回の収穫ですね。」


――「Big Sac」も「A View From Dan Dan」も、曲の途中で色んなリズムが入ってきたりフィールが変わったりっていうのがあるからそこはバッチリ決まってるのかと思ってました。

[石若駿]
「曲に対して大まかなフィールは決まってたりするんですけど、具体的な部分は決まってなかったりというか。例えば4ビートとは決まっていても、どういう感じのスウィングで行くのかは決まってなかったり。「Big Sac」とかも何のビートかわかんないし(笑)まぁやっぱり自分が後回しになるからだろうな。バンドメンバーに「ここはこうやって」、「ここのハーモニーはこうやって積んで」、「ベースはこっちの音域でやって」ってディレクションをしていって一番最後に最後に「自分はどうするの?」ってなってるから。だから難しかったのかも知れない。」


――その割にアーロン・チューライとか井上銘くんとかコード楽器陣がすごい自由に演奏している感じなのはライブ感があって良いなと思いました。

[石若駿]
「そうなんです。指定するところは指定してあとは自由にやってって感じで。でもやっぱり銘くんやアーロンは摩訶不思議で予想不可能だから。銘くんなんかいきなりリングモジュレーターで<ボコボコボコッ>とか、ずっとハウリングしてたりとか。そういうのも楽しみましたね。僕がメンバーを選ぶ時に考えるのは、知らない景色を見せてくれる人が好きで。例えばスタンダードでも<こんなコードやったらこんな響きになるのか!>ってなるような人が好きで。ベースの金澤さんとか須川さんもそういう人だし。それで全然違う景色になって面白かったり。」


――石若くんはこれまでにも色んなバンドで沢山レコーディングをしてますけど、やっぱりライブとレコーディングでは全然違いますか?

[石若駿]
「今回はレコーディングも2日で終わってコンパクトでしたし、ほぼ一発だったので「面白―い」ってみんなで面白がってる間に終わったって感じですね。気分的にはやっぱり構えますけど。「間違っちゃいけない」とか「何か起こしてやろう」とかそういう邪念みたい出てきたりしますけど(笑)でもそういうのって一番ダメなんですよね。やっぱり自然体でハプニングした時に一番良いテイクが録れるんです。」


――今回はまさにそんなハプニングが詰まったサウンドですよね。めちゃくちゃストレートで。

[石若駿]
「そうなんですよね!かなりライブ感のある仕上がりになってると思います。でも自分では完成するまでどんなサウンドになるのか全く想像出来てなくて。で、いざ完成して並べて聴いてみたら<おぉ、ジャズじゃん(笑)みたいな。僕としてはこのアルバムは自分の曲の作品集的な、自分の書いてきた曲を録音して収めてっていうイメージでもあったんだけど、一貫してジャズのサウンドになったんです。ジャズのアルバムを作ろうって意識したわけではなくて、「何も気にしなくていいよ」って好きにやらせてくれたんですけど、いざ曲が出てきたら自然とそういう感じになりました。」


――石若くんは録音作品を作るっていう事に対してモチベーションはありますか?

[石若駿]
「ありますね。僕はレコーディング自体もすごい好きで、曲を書くこともすごい好きだから。あと自分の音楽を世の中に確立したいっていうのはやっぱり夢なので。ドラマーなんだけど、自分の音楽っていうのを1アーティストとして確立させたいっていうのがあるから、これからも色んなことをやって作品として世に出せたらいいなと思ってます。そうしないとあんまり意味が無い気がしていて。やっぱり憧れがあって。例えば森山さんも日野さんもマイルスも、作品を追っていくと<こういう音楽を聴いてきたんだな>とか<この時はこういう音楽を目指してたんだな>とか、その人の歴史がわかるじゃないですか。そういう一生を通して作品があることで、その人の音楽が見えるっていうのを自分もやりたいなと思って。」


――自分名義でフルサイズのアルバムっていうのは今回が初めてだけど、石若くんは参加作品の数がすごいですよね。

[石若駿]
「もう30枚くらいになってますね。実はこのアルバムが発売日にも僕の参加してるアルバムが合わせて3枚くらい出ると思うんですよね(笑)ジャズDJの大塚広子さんがプロデュースしている「RM JAZZ REGACY」っていうユニットと、「PANDA WIND ORCHESTRA」っていう藝大の吹奏楽のバンドのアルバムで。(インタビューの)2日後には北園みなみさんのアルバムが出ますし。」


――石若くんはそういう風にジャズでも、ジャズじゃない音楽でも演奏してたりするわけだけど、やっぱり自分のなかでプレイは別物になるんですか?

[石若駿]
「最終的に音をだすのは僕なので、そんなに別物感は無いですね。クラシックでもジャズでもポップスでも僕のサウンドっていうのがあるので。」


――石若くんが最近<面白いな>って思うのはどんな音楽なんですか?

[石若駿]
「最近はジャズはもちろん聴くんですけど、「世界を揺るがす音楽」みたいなものに敏感にアンテナを張って聴くようにしています。いわゆるレコードショップで推されているものとかを全然知らないアーティストでもとりあえず聴いてみてカッコ良かったら買う、みたいな。最近買ったのは天才バンドの『アリスとテレス』ですね。YouTubeでトラベルスイング楽団とやってるのを観てから奇妙礼太郎が結構好きで。あと最近好きなのはポートランドのアンノウン・モータル・オーケストラとかオーストラリアのテーム・インパラとか好きだし、スウェーデンのオキシゲンとか、あとタイ・セガールとかも好きだし。ちょっとサイケな歌もの、みたいなのはすごい好きですね。サウンド的には昔のサウンドを今のフィルターを通してやってる人が好きです。アラバマ・シェイクスとかはまさにそういう感じですぐ買いましたね。あと星野源もすごい好きで武道館公演も見に行きました。僕はよくラジオを聴いていて、大体それで出会ってますね。」


――日本のバンドとかだとミュージシャン同士で交流があったりするんですか?

[石若駿]
「最近あったのは、サカナクションのドラムの江島啓一さんですね。僕がテイラー・マクファーリンと一緒にやった時に観に来てくれていて出会ったんですけど、それからJAZZ SUMMIT TOKYOにもクラウドファンディングに参加してくれてライブも観に来てくれて。こないだはスガダイローさんのバンドで世武裕子さんとケイタイモさんと一緒に出来たりっていうのがありました。今年はポップスにも結構参加することが出来て、原田知世さんのバンドでもやらせてもらったし、MONDAY満ちるさんとも出来たし。そうやって色んな人と交流したいんですけど、やっぱりなかなか機会が無いですね。」


――ドラマーだと最近はヒップホップのトラック用のレコーディングとかもありますよね。フライング・ロータスとかケンドリック・ラマーのアルバムにジャズ・マンが入っていたりとか。

[石若駿]
「最近はそういうビート系のもので呼ばれる事も多いですね。「Stones Throw」ってヒップホップのレーベルがあるじゃないですか?こないだそこのダドリー・パーキンスってラッパーが日本にちょうど来ていて、「トラック作りたいから」って呼ばれて。宮川純くんとDJ YUZEさんと一緒に行ってレコーディングしました。そこではいわゆるJディラ的なヒップホップのビートを叩いて。リリースされるのかはわからないですけど、レーベルの人もたくさん来てたから形にはなるんだろうなって。あと去年は黒田卓也さんに「ホセ・ジェイムスのロンドンチームのキーボードが来てるから一緒にレコーディングしよう」って誘われて3人でレコーディングしたりとか。」


――石若くんも今後まだまだ色んな方面からオファーありそうですよね。

[石若駿]
「あったらすごく嬉しいです。偉そうな感じかもしれないけど、本当に僕がやってる音楽が好きでオファーされたら最高だなって思います。」


――石若くんが今注目している自分より若手のミュージシャンって誰かいますか?

[石若駿]
「僕より若い人ですか?アルバムに入ってる侑成はもちろんですけど、高橋陸ってベーシストがいて、彼は共演するたびに良くなってるなって思います。初めて会った時彼が高校1年生で、今19歳とか。彼はバークリー行くかもしれないんですけど着実に良くなっているので楽しみです。あと最近直接観れてないんですが、ちびっこドラマーで有名だった鬼束大我くんが今高校生になっていて、すごいって噂を色んな所から聞きますね。」


――最後に石若くんが最近やってるプロジェクトを教えて下さい。

[石若駿]
「実は去年からスタジオに篭って一人でピアノを弾いてドラムも叩いてゲストのボーカルを入れて僕の曲に歌詞を書いてもらって歌ってもらうっていう作品をこっそり作ってます。こないだは<けもの>の青羊さんに歌ってもらったし、サラ・レクターさんにも歌ってもらったし。角銅真実さんに歌ってもらったりとか。ゆくゆくは配信にするか自分でプレスして手売りで売ってみようかとも思うし、どこかがリリースしてくれたらなとも思うし。今のところ5曲たまっていて。

あとは「Ki-Do-Ai-Raku」っていうパーカッション・カルテットを藝大の同期4人で組んでいて、3月にそれのファースト・リサイタルがあるのでそれの為に動いていたりとか。これは今年の2月にその4人でルクセンブルクにコンペティションを受けに行って、セミファイナルまで行けたから<これで終わるのはもったいないから日本でもリサイタルをしよう>って。」


――へぇー。じゃあこれからやることもジャズに限らずって感じで。

[石若駿]
「そうですね。とにかく自分がやりたい事とか興味がある事は全部やりたいって感じですね。このバンドでも1月にリリースライブをするので是非見に来てほしいです。」


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Recommend Disc

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Title : 『CLEANUP』
Artist : SHUN ISHIWAKA 石若駿
LABEL : SOMETHIN'COOL
NO : SCOL1011
RELEASE : 2015.12.16

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【MEMBER】
石若駿 Shun Ishiwaka (ds)
吉本章紘 Akihiro Yoshimoto (ts, ss)
中島朱葉 Akiha Nakashima (as)
井上銘 May Inoue (g)
アーロン・チューライ Aaron Choulai (p)
高橋佑成 Yusei Takahashi (p)
須川崇志 Takashi Sugawa (b)
金澤英明 Hideaki Kanazawa (b)


【SONG LIST】
1. The Way To Nikolaschka
2. Dejavu #1
3. Darkness Burger
4. A View From Dan Dan
5. Cleanup
6. Professor F
7. Ano Ba
8. Dejavu #2
9. Into The Sea Urchin
10. Big Sac
11. Siren
12. Wake Mo Wakarazu Aruku Toki
13. Tanabata #1







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【石若駿】(ドラム)

1992年生まれ、札幌出身。10歳のときに来日中のハービー・ハンコックに見出され、その後15歳にして日野皓正(tp)バンドに抜擢。東京藝術大学付属高校を経て同大学打楽器科へ進学。在学中よりファーストコール・ドラマーとして数々のバンドのレコーディング、ライブに参加。またアニメ「坂道のアポロン」では主人公・千太郎のドラムモーションと演奏を担当。2015年東京ジャズにおいては、沖野修也率いるKyoto Jazz Sextetにて出演し、リチャード・スペイヴン(ds)と披露したツイン・ドラム・ソロがテレビでもOAされ話題となっている。ジャズ演奏の傍ら今年藝大打楽器科を首席で卒業。ジャズ界、クラシック打楽器界、そしてポップス界、誰しもがその後の動向に注目する中、初のフル・リーダー作発表となる。


石若駿 Official Site

New Century Jazz Quintet 3月に来日公演決定!:インタビュー / INTERVIEW

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天才ドラマーとして注目を集めるユリシス・オーウェンズ・ジュニアと、
日本人ピアニスト、大林武司を中心に結成された日米混合ユニット、New Century Jazz Quintet。
(ユリシスは、クリスチャン・マクブライドから信頼される今やNYで一番忙しいといわれるドラマー、
大林武司さんはNYを拠点に活躍、日本人トランペッター黒田卓也さんやJUJUさんのライブでもお馴染みですね。)

昨年はデビューアルバムのリリースや、大盛況で終えた発売記念ジャパンツアーなど話題となりました。
そんなNew Century Quintetが3月に再び日本公演を行います!
今のNYの息吹を感じる新世代ジャズ、是非体感して下さい。

多忙な大林武司さんを滞在先のドーハ(カタール)でキャッチ。
今回の来日公演についてメールインタビューでお答えいただきました。


【大林武司 メールインタビュー】

■ちょうどドーハに滞在されているタイミングでこのメールをお送りしていますが、
ドーハには演奏で行かれているのですか?そちらのジャズシーンはどんなですか?

[大林武司]
カタールの首都ドーハにニューヨークのJazz at Lincoln Center監修のJazz at Lincoln Center Dohaというジャズクラブがあり、ニューヨークの自分のピアノトリオと一緒にドーハに行き6週間滞在してジャズクラブでライブをしたり、カタールでのジャズの普及活動や教育活動をしています。3年前にJazz at Lincoln Center Dohaがカタール最初の本格ジャズクラブとしてオープンしてからはジャズがようやく認知されだして、それから少しずつジャズシーンが発展しているように思えます。カタール政府の支援もあって世界中から素晴らしい芸術家がドーハに移住して活動しており、中東の民族楽器を演奏する音楽家やカタール交響楽団の音楽家とジャズを通じてコラボする機会があったりもしました。


■昨年6月にデビュー作をリリース、7月には日本ツアー。
お披露目となった日本でのライブはいかがでしたか?印象的な出来事ありましたか?

[大林武司]
7月の日本ツアーはお陰様で初日から最終日までどの公演も非常に盛り上がりました!最高でした!ツアー全体を通じて幅広い年齢層のお客様にお越し頂き、ジャズを初めて聴いたという方々から往年のジャズファンの方々まで皆様目を輝かせてCDサイン会に参加して下さったことがとても嬉しかったです。メンバー一丸となって全力投球で演奏したエネルギーをお客様も暖かい拍手や歓声で返して下さったりと、ツアー全公演どれも本場ニューヨークのライブに近い雰囲気でした。


■今回の来日公演ではティムの代わりにアルトはブラクストン・クックが参加しますね。
彼について教えて下さい。

[大林武司]
ブラクストンを最初にNYCで聴いた時にはまるでチャーリーパーカーのようなスピード感と歌心にびっくりしました。若くしてクリスチャンスコットのバンドメンバーに抜擢されて世界ツアーに参加するなどしてジャズシーンに頭角を表して来ています。ジュリアード音楽院にてしっかりと学んだジャズのルーツをR&Bを融合させたリーダーアルバムも発表しており、彼の音楽性やプレイスタイルに温故知新という言葉を大切にされている部分がニューセンチュリージャズクインテットのコンセプトと共通していると思いますまたブラクストンは比較的珍しい 銀のサックスで演奏しており、個人的には銀のサックスならではの音色が個性的で大好きです。


■昨年に続きNCJQとして2回目の来日公演。今回の公演はどんな感じになりそうですか?

[大林武司]
昨年と同じくメンバー全員で 全力投球で熱いライブにしていきたいと思っています!今回の来日公演の為に書き下ろしたオリジナルやジャズスタンダードのアレンジも数々演奏しますのでどうぞお聴き逃し無く!


■最後に日本公演後の今後の予定を教えて下さい。

[大林武司]
NCJQとしては2ndアルバムを3月末にレコーディングをして夏に発表と日本ツアーをして、秋冬にはアメリカツアーの予定です。またNCJQと平行してリーダートリオプロジェクトを始動して、この春にはニューヨークのブルーノートで公演予定です。サイドメンとしても後日公表予定のエキサイティングなニューアルバムやツアーの予定が多々ありますので是非ホームページやブログ、フェイスブックより応援頂けると幸いです!


【New Century Jazz Quintet, AWESOME LIVE Performance in Japan 2014】




【New Century Jazz Quintet 来日公演】


<日時>
2015年3月17日(火)& 3月18日(水)
[1st.show] open 5:00pm / start 6:30pm
[2nd.show] open 8:00pm / start 9:00pm

<出演>
Ulysses Owens Jr. (ds), 大林武司 (p), 中村恭士 (b), Benny Benack (tp), Braxton Cook (sax)
※今回アルトサックスはブラクストン・クックとなります。

<場所>
COTTON CLUB
〒100-6402 東京都千代田区丸の内2-7-3 東京ビルTOKIA 2F
TEL 03-3215-1555
営業時間 (5:00pm - 11:00pm ※土・日・祝のみ4:00pm - 10:30pm)
予約&お問い合せ受付時間 (11:00am - 10:30pm ※土・日・祝のみ11:00am - 9:00pm)

<料金>
[自由席] テーブル席 : ¥6,000
[指定席]
BOX A (4名席) : ¥8,000
BOX B (2名席) : ¥7,500
BOX S (2名席) : ¥7,500
SEAT C (2名席) : ¥7,000

<予約>
COTTON CLUB予約ページ

<詳細>
http://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/artists/new-century-jazz-quintet/


【New Century Jazz Quintet 追加公演決定!】

3月19日(木)
茨城県ひたちなか市ブリックスホール
時間:午後7時開場、7時半開演
料金:4,000円(税抜)*チケットはMusic Shop Sekiyama
電話:029-273-6803
http://www.sekiyamainc.co.jp/contents/access/access.html


3月20日(金)
茨城県日立市 ホテルテラスザスクエア日立 TRAX
時間:午後6時半開場、午後7時半開演
料金:5,000円(税込、ワンドリンク付)*チケットは前売り制
電話:0294-22-5531
http://square-hitachi.jp/restaurant/trax.htm


『デビューアルバム『Time Is Now』

■タイトル:『Time Is Now』
■アーティスト:New Century Jazz Quintet
■発売日:2014年6月25日
■レーベル:Spice of Life
■製品番号:SOLNS-2

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[収録曲]

01. New Century
02. Tongue Twister
03. London Town
04. Decisions
05. Festi-vibe
06. Pure Imagination
07. Language of Flowers
08. El Gran Arado
09. Infinit10. Yasugaloo


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New Century Jazz Quintet
Benny Benack/ベニー・ベナック(Tp)
Tim Green/ティム・グリーン(As)
Yasushi Nakamura/中村恭士(B)
Takeshi Ohbayashi/大林武司(P)
Ulysses Owens Jr./ユリシス・オーウェンズ・ジュニア(D)

天才ドラマーとして注目を集めるユリシス・オーウェンズ・ジュニアと俊英ピアニストとして期待されている大林武司が中心となって、ニューヨークで活躍する有能な若手ミュージシャンが、「ジャズの歴史に深く根付きつつ若い感性でジャズの今を表現していく」をコンセプトに掲げ結成された日米ハイブリッド・バンドが生まれた。それがNew Century Jazz Quintetだ。2014年6月25日にアルバム"Time Is Now"で待望のデビュー!

大林武司 オフィシャルサイト

DJ大塚広子インタビュー:インタビュー / INTERVIEW

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Jazzを中心とした幅広い選曲で知られ、
最近はジャズ喫茶や老舗ジャズクラブ等、リアルジャズシーンでも活躍する女性DJ、大塚広子さん。

この度自身がプロデュースするレーベルを立ち上げ、第一弾となるコンピレーションをリリースされました。
日本の新世代ジャズを切り取った、ありそうでなかった内容です。
メールインタビューでは、このコンピレーション、そして日本の新世代ジャズについてお伺いしました。

2015年1月度のPIT INN「Entertainment Nightly」ではゲストとして大塚さんが登場します。
そちらも是非お聴き下さい。

PIT INN「Entertainment Nightly」 (配信期間:2015年1月7日~2015年2月4日)
http://www.jjazz.net/programs/pit-inn/


【大塚広子インタビュー】

Q. まさに今の日本の新しいジャズシーンを捉えたセレクション!
これまでにない一味違うジャズコンピですが、どういうテーマでコンパイルされたのですか?

[大塚広子]
振り返ってみれば今まで日本のジャズ・レーベルのコンパイルMIX CDを出し、その中で過去から今にかけて時代を追ってジャズを勉強させてもらったように思います。この作品が私の10作目になりますが、今回は初心に戻って自分の手で曲を選ぼうと決めました。それと同時に、私のライフワークになっている音源追求のなかで、いま新しいジャズが面白い!という結果に至りました。昔は過去のレコードを探して聴いてプレイしての繰り返しでしたが、最近はミュージシャンとの共演が多くなったこともあり、今の音楽についての感動がすごく大きくて。そんな今起こっていることを、もっともっとたくさんの人に聞いてもらいたいという動機からです。


Q. 未発表曲が数曲ありますが特にオススメの曲があれば教えて下さい。

[大塚広子]
丈青、秋田ゴールドマン、FUYUのデ・ラ・ソウル「Stakes Is High」のカヴァー、丈青、日野"JINO"賢二、FUYUのロイ・ハーグローヴ「Strasbourg / St. Denis」のカヴァー。この二つはライヴ録音の未発表音源でおすすめです。
ほかにも私の大好きな70年代のレコードで、フリージャズ・サックス奏者ジョー・マクフィーの一曲をサイケ・ファンク風に9人ユニットでカヴァーしています。このエネルギーは凄まじくてかっこいいです!どれも私のDJプレイと同じテイストのカヴァー・セレクトで妥協ない選曲ができました。


Q. 大塚さんがプロデュースされた新ユニットRM jazz legacyについて教えて下さい。

[大塚広子]
この作品をつくるにあたって一つの課題がありまして...。単にコンピレーションとしての作品にすることもできましたが、私の過去の作品やDJプレイと同じコンセプトしたかったので、ブラック・ミュージックに共通するグルーヴ感がどうしても必要でそれが大きな課題でした。今回の選曲で多く関わってくれたベーシストの守家巧さんとの話のなかで、この私の課題と彼の音楽性も近いことがわかり、新たな音楽をつくることになりました。
ミュージシャン選定から楽曲のディテールに至るまで意見を出し合って、たとえば、D'Angelo「Spanish Joint」のリズムパターンに、Donald Fagenの『Nightfly 』の雰囲気を重ねたら・・。ジャズ・ミュージシャンの高い技量を活かして、例えばロイ・ハーグローヴ、例えば、ロニー・リストン・スミスのようにサウンド重視にしてみたら・・。という話の結果、人選は存在感あるフロント、類家心平。確実な技量のキーボーディスト坪口昌恭。HipHop以降のクラブシーンでのファーストコール・ドラマー、mabanua。在米10年以上の経験でゴスペル、R&Bシーンを知るギタリスト、田中"TAK"拓也。あったらいいなと思っていた日本発のグルーヴィー・サウンドが出来上がりました。


Q. 新世代ジャズが注目を集めていますが、日本の新世代のジャズを現場で観ていて感じることとは?

[大塚広子]
今まで自分が聴いてきた過去のジャンルの影響をバックグラウンドとして持つミュージシャンが増えてきていることに気づくようになりました。同じように同世代の柳樂光隆さんの監修した21世紀のジャズをフォーカスした「Jazz The New Chaper」といったガイドブックの動きもあり、レコードの聴き方と同じように等身大で今の音楽を聴くことができるようになったのも自分の実感としてあります。ミュージシャンも複数バンドを持ちいろんなジャンルをフレキシブルに行き来するような傾向があるように思います。


Q. 最近注目しているジャズミュージシャンとは?

[大塚広子]
すでに注目されてる若手ドラマー、石若駿がキーボーディスト&ビートメイカーのAaron Choulaiと組んでいるユニット。フィジカルなリズムと若い世代らしい斬新なビートミュージックに期待です。あとはいままで日本ではあまり取り上げられていなかった男性ヴォーカルのジャンルで、河合卓人。グレゴリー・ポーターのようなソウル/ジャズ系にもハマる才能があってこれから楽しみです。


Q. 大塚さんプロデュースの新レーベル"KeyofLIFE+"でやりたい事、
また今後の予定あれば教えて下さい。

[大塚広子]
これらの15曲はたくさん方との出会いで知ることができましたし、そして本作に入れられなかった素晴らしい音楽もまだまだたくさんあります。さらに新しい音楽を入れて今を奏でるmixガイド・シリーズとして広めていけたらと思います。
12/26渋谷THE ROOM、12/27御茶ノ水cafe 104.5 で、リリースパーティー。2/3 ARK HILLS cafe、2/22 六本木アルフィーで、RM jazz legacy の初ライヴを予定しています。

これからも新しい音楽も一緒に楽しめるような提案をしていきたいと思いますので皆様よろしくお願いします!


ありがとうございました。


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【DJ大塚広子プロデュース 次世代ジャズ・コンピレーション】

■タイトル:『PIECE THE NEXT』
■Produce & Director:大塚広子(Hiroko Otsuka)
■発売日:2014年12月17日
■レーベル: Key of Life+
■製品番号:KOL1

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日本の新世代ジャズをいち早く取り上げた大塚広子新レーベル・キー・オブ・ライフ・プラス第一弾。未発表曲や自らの楽曲提供&プロデュース曲を含めた現在とこれからのJAPAN GUIDE。


[収録曲]

1 GL/JM / 類家心平 4 Piece Band
2 Tokyo Confidential / 挾間美帆 m_unit
3 Rockin' In Rhythm / Orquesta Libre + Suga Dairo + RONxII 
4 Shakey Jake / Takumi Moriya Black Nation
5 Regular / Yasei Collective feat.Shane Endsley (tp) Ben Wendel (ts) from Kneebody
6 Heavy Seas (Live) / Rumba On The Corner
7 grmethod / Kinetic(千葉広樹,服部正嗣)
8 Do Good/ Yasei Collective
9 Stakes Is High / JOSEI ACOUSTIC PIANO TRIO(丈青,秋田ゴールドマン,FUYU)
10 Ameeta / Bennetrhodes(佐野観)
11 Night Flight / RM jazz legacy(類家心平,(tp)守家巧(b),坪口昌恭(p),mabanua(ds),田中 "TAK" 拓也(g))
12 明日への光 / オンセン・トリオ (岩見継吾,栗田妙子,池澤龍作)
13 Rock Out / 西山瞳・トリオ"パララックス"
14 Strasbourg / St. Denis / element3(丈青,日野"JINO"賢二,FUYU)
15 Park / 橋爪亮督グループ


[収録曲の参加ミュージシャン]
丈青、日野"JINO"賢二、秋田ゴールドマン、FUYU、岩見継吾、栗田妙子、池澤龍作、千葉広樹、服部正嗣、類家心平、ハクエイキム、吉岡大輔、鉄井孝司、挟間美帆、スガダイロー、芳垣安洋、青木タイセイ、塩谷博之、藤原大輔、渡辺隆雄、ギデオン・ジュークス、高良久美子、鈴木正人、椎谷求、岡部洋一、スガダイロー、RON×II、坪口昌恭、守家巧、pepe福本、城戸絋志、沼 直也、mabanua、田中TAK拓也、佐野観、橋爪亮督、市野元彦、織原良次、橋本学、佐藤浩一、西山 瞳、坂崎 拓也、清水 勇博、馬場 孝喜、ヤセイコレクティブ (松下マサナオ/中西道彦/斎藤拓郎/別所和洋)、Kneebody(Shane Endsley/Ben Wendel)


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大塚広子 (DJ/ライター)

2004年以降、ワン&オンリーな"JAZZのグルーヴ"を起こすDJとして年間160回以上のDJ経験を積んできた。徹底したアナログ・レコードの音源追求から生まれる説得力、繊細かつ大胆なプレイで多くの音楽好きを唸らせている。渋谷の老舗クラブTheRoomにて13年目に突入した人気イベント「CHAMP」など日本中のパーティーに出演。また音楽評論家やミュージシャンを巻き込んだライブハウスやジャズ喫茶でのイベント・プロデュースなど、世代やジャンルの垣根を越えたその柔軟なセンスで音楽の様々な楽しみ方を提示している。日本のジャズ・レーベルである、「トリオ」(ART UNION)、「somethin'else」(EMI MusicJapan)、「DIW」(DISK UNION)、「VENUS」(Venus Record)のMIXCDと、スウェーデン・ジャズを中心とした、スパイス・オブ・ライフ・レーベルのコンパイル作品「Music For Reading」(ディスクユニオン)を発売。過去リリースCDの売上数は延べ1万枚を超える。2010年、スペインでのDJ招聘、「FUJI ROCK FESTIVAL2010」の出場。2012年、老舗ライヴハウス新宿PIT INNのDJ導入を提案し、菊地成孔と共演(TBSラジオ出演)。BLUE NOTE TOKYOにて日野皓正らとの共演。総動員数3万人に及ぶアジア最大級のジャズ・フェスティバル「東京ジャズ2012」にDJとして初の出演。2013年、ニューヨークでののDJ招聘等。「JAZZ JAPAN」等の雑誌でのアーティストインタビュー、レビュー執筆の他、web連載、ディスク・ガイドブックやCDライナー執筆など音楽ライターしても活躍中

大塚広子 Official Site

吉田慶子インタビュー[インタビュアー黒沢綾]:インタビュー / INTERVIEW

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10/22にカエターノ・ヴェローゾ集『カエターノと私』をリリースする、
ボサノヴァ、サンバ・カンソン歌手の吉田慶子さん。

10月放送の番組「PICK UP」(2014年10月1日~2014年11月5日)では、
そんな吉田慶子さんとのインタビューをご紹介しています。

http://www.jjazz.net/programs/pick-up/index.php
「PICK UP」」10月度 (配信期間:2014年10月1日~2014年11月5日)

番組内で紹介しきれなかったインタビューをこちらにまとめました。
番組と共にお楽しみ下さい!
  [Interview:黒沢綾]


吉田慶子 インタビュー


■ブラジルには何度か訪れているのですか?


[吉田慶子]
2回ですね。当時ポルトガル語を日本にいるブラジル人のご夫婦に習っていて、たまたま一時帰国する機会に「一緒にどう?」って言われて・・・。なかなかないチャンスだから「行く!!」って。


■現地で音楽に触れる機会は?セッションとかあるんですか?


[吉田慶子]
サンパウロに行ったんですけど、そこでは私が求めていた古い音楽はほとんどなくて。ボサノヴァにしろサンバ・カンソンにしろ。。。
ただその当時はそうだったけれど、今はちょっと変わってきているんじゃないかと。私が行った時も、ちょうどテレビドラマの主題歌にジョビンの「コルコバード」が流れたりして。つまりリバイバルですよね。ブラジル国内でも見直されている時期がありましたね。


■古き良きものを、ということですね。


[吉田慶子]
世界中の人が愛している音楽だということを、現地の人もわかってらっしゃって。もう一度大事にし始めたんじゃないかと。


■じゃあきっと今行ったら、昔よりは聴ける機会が増えているかもしれないですね。


[吉田慶子]
特にリオなどはそうだと思います。


■アルバムのお話ではないのですが、、、JJazz.Netのショップページで「吉田慶子&笹子重治ライブ@新世界」の音源が人気のコンテンツになっています。この時のライブの印象を教えていただけますか?


[吉田慶子]
このライブは、、、ちょうど大きな地震があったあとで。私自身も住む場所が変わったりしてバタバタしている時期で、歌を歌う状況では正直あまりなくって、本当はすこし引きこもってたんですよね。


■その気持ち、とってもわかります。はい。


[吉田慶子]
ライブも、実は決める前はあまり出来そうにもないなぁ、って。。。
でもある時、ギターの笹子さんに「そんないつまでも引きこもって....吉田さんだって食べてかなきゃでしょ!」って。関西のお母さんみたいな言い方で。。。その感じに思わず和んでしまって。
それでちょっと元気になって、「やろう!」って。。。なので、やはり他とは違う思いがありますよね。
実際、久しぶりに二人で演奏して、すべてを忘れたというか。歌っている瞬間は、しんどいことや普段のこと、みーんな飛んでいって。とても幸せな時間でしたね。いいなぁ、と実感して。だからその時の気持ちは忘れてないですね。
ただ、声を聞くとダークなんです。だから声は正直だなあ、と。


■なるほど。残ってるんですね。


[吉田慶子]
でも、それはそれでいいんじゃないかなって。"その時" のものだから。


■そうですよね。いやぁ、なんだかじんわりとしてしまいました。。。




■話は変わりますが、プロフィールやブログを拝見すると好きなものが沢山ありますよね。パンダ、お相撲、落語、猫ちゃん、、、最近特にハマっているのは?


[吉田慶子]
みんな好きなんですけど、お相撲・・・かな。見に行ったりして。


■お相撲のプリクラ撮ったりしていましたよね?(笑)


[吉田慶子]
ミーハーですよね(笑)もともとテレビではよく見ていて、東京にきてから「観に行けるんだ...」と気づいてしまって。あとは目当ての力士のことを色々と調べるのも好きです。


■追っかけですね(笑)


[吉田慶子]
(笑)好きになると、知りたくなって、調べているうちにますます好きになるんです。


■今、イチオシの力士は?


[吉田慶子]
私としては、日本の方もモンゴルの方も「みんながんばってほしい!」って。その中でも最近はモンゴルからきている逸ノ城ですかね。若くて、大きくて。199kgもあるんですよ。岩のようなんです。


■岩!(笑)


[吉田慶子]
戦った力士が必ず言う言葉が「重い!!」(笑)って。そのくらい動かないんですよ。取り組みもほんの数歩で勝っちゃうの。その彼が最近の大注目。あとは、照ノ富士。朝青龍以来のヒール役になってくれるんじゃないかと。いい子ちゃんではない良さがあって。やんちゃな感じがいいな、と睨んでます(笑)


■(笑)チェックしてみます!楽しいお話をありがとうございました!

[Interview:黒沢綾]


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【吉田慶子CD発売記念ライヴ】


<日時>
2014年11月7日(金)
OPEN 18:30/START 19:30

<出演>
吉田慶子 (ヴォーカル、ギター)、黒木千波留 (ピアノ)、増根哲也 (ベース)

<場所>
東京・渋谷「サラヴァ東京」
http://www.l-amusee.com/saravah/
〒150-0046
東京都渋谷区松濤1丁目29-1 クロスロードビル B1

<料金>
予約3,800円/当日4,300円(1ドリンク付)

<予約・詳細>
サラヴァ東京
http://l-amusee.com/saravah/schedule/log/20141107.php(サラヴァ東京)


『ニューアルバム『カエターノと私』2014年10月22日発売』

■タイトル:『カエターノと私』
■アーティスト:吉田慶子
■発売日:2014年10月22日
■レーベル:COREPORT
■製品番号:RPOL10001

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ブラジル音楽の財産を慈しみ、ささやくような声でその魅力を伝えるボサノヴァ~サンバ・カンソン歌手の吉田慶子による待望の最新録音作。今回はカエターノ・ヴェローゾの膨大なレパートリーから厳選した美しい10曲を歌う。メンバーは黒木千波留(p,)、増根哲也(b)、そして自身の歌とギターによるシンプルな編成。繊細かつエモーショナルなアレンジでカエターノの曲の良さが吉田慶子の音楽として表現される、ひたすら美しい1枚。選曲もカエターノの長いキャリアの中から厳選。これらカエターノが歌った名曲たちを、自身のウィスパー・ヴォイスと丁寧なサウンドで新しく甦らせる手腕は、世界的にも希少なカエターノ集ということも加わり、今後もエバーグリーンなアルバムとして存在し続けること間違いなしの傑作盤。

吉田慶子 (ヴォーカル、ギター)
黒木千波留 (ピアノ)
増根哲也 (ベース)

[収録曲]

01. ペカード(罪)
02. トリーリョス・ウルバーノス (アーバン・トレイル)
03. ドミンゴ
04. マドゥルガーダ・イ・アモール (夜更けの愛)
05. ミケランジェロ・アントニオーニ
06. リンデーザ (うつくしいおまえ)
07. ブランキーニャ(白の少女)
08. ヴァルサ・ヂ・ウマ・シダーヂ (ある町のワルツ)
09. アルゲン・カンタンド (誰かが歌ってる)
10. シン、フォイ・ヴォセ (そう、あなただった)


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吉田慶子

ブラジル音楽、特にボサノヴァに魅せられ1998年より東北のライブハウスを中心に歌い始める。繊細でいて深みのある歌声はまるでボサノヴァそのものと同化したかのような神秘性すら感じさせる。レパートリーはボサノヴァだけでなく古いサンバ・カンソンにまで及びブラジル音楽の財産を慈しむ姿勢がそのままサウンドに表われている稀有な存在のアーティスト。2000年にブラジルに滞在、BWANA TRIOのドラマーTataのもとでブラジル音楽を学ぶ。 翌年、滞在中にTataと録音したファーストアルバム「愛しいひと」を発表。ブラジル・ディスク大賞邦人第4位入賞。2003年からはふくしまFM「一枚の写真から」のパーソナリティとしても活躍した。 2005年に同番組と連動した2nd『一枚の写真からライブコレクションvol.1』をリリース(ゲスト:ショーロ・クラブ、長谷川きよし)、大きな反響を呼び2006年にはvol.2発売(ゲスト:ショーロ・クラブ、パトリック・ヌジェ)。以降も『コモ・ア・プランタ~ひそやかなボサノヴァ』(2007年)、『パレードのあとで~ナラ・レオンを歌う』(2009年)をリリース。自主制作盤では『サンバ・カンソン』(2007)、『soneto』(2013)を黒木千波留とのデュオでリリース。作家の北村薫が自身の小説にモデルとして登場させるなど、ジャンルを越えてファンが多い。

吉田慶子 サイト

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『黒沢綾NEW ALBUM』

■タイトル:『Twill』
■アーティスト:黒沢綾
■発売日:2013年11月1日
■レーベル: HARU Records
■製品番号:HARU017

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[収録曲]

1.Aurora アウロラ
2.Circle ONE
3.月が赤く染まるとき
4.紫陽花の転たね
5.うさぎ
6.沙羅
7.月とワルツ
8.DRAMA
9.傘ひとつから

(黒沢綾コメント)
胸をはって、私のこれからを照らしてくれる作品に仕上がりました。一発録りの緊張感も、ひらめきも、ファインプレイも、"生きた音楽"としてこの一枚に収める事ができたように思います。純粋に楽しみ、自分でさえも知らない自分を見つけてもらえたら、嬉しいです。

この商品はSound Bright Online Shopにて購入できます


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黒沢綾 (Singer,Piano) プロフィール

音楽教室を営む母をもち、4歳よりピアノ、エレクトーン、中学では吹奏楽、高校では声楽、と、幼少期より音楽三昧の日々を送る。尚美学園大学JAZZ&POPSコースの一期生として自然な流れでジャズに傾倒しながら、在学中にジャズシンガーとしてキャリアをスタート。2004年、同コースを首席で卒業。友人の結婚をきっかけに日本語曲の創作を始め、以降はピアノ弾き語りにシフト。
2009年、ピアニスト Hakuei Kimとの共同プロデュースによる、1st Album「うららか」をリリース。繊細な心模様を詰めこんだ良作となった。制作中に最愛の母を亡くし大きなターニングポイントを迎えるも、母譲りの澄んだ声質と幅広い音楽体験を活かした楽曲制作に力を注ぐ。現在は自身のトリオ、タップダンサーkurikoとのユニット「うたっぷす」、弦楽四重奏とのコラボ、ライブの原点であるジャズシンガーとしての活動のほか、CM歌唱やコーラスなど、声を活かし幅広く活動中。
2013年11月、2nd Album「Twill」をリリース。より有機的で奔放な表現世界と、圧倒的な完成度で注目を集める。
現在、インターネットラジオ・ステーションJJazz.Netの番組ナビゲーターをつとめる。

HARU Recordsアーティストページ

大林武司(New Century Jazz Quintet) インタビュー[インタビュアー黒沢綾]:インタビュー / INTERVIEW

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天才ドラマーとして注目を集めるユリシス・オーウェンズ・ジュニアと、
NYを拠点に活躍する日本人ピアニスト、大林武司を中心に結成されたNew Century Quartet。
先人への尊意を払いながらも、若さと勢いのある精鋭達が揃ったスーパーバンド。
「Time is Now」と冠したアルバムタイトルがまさしく新時代を感じさせる瑞々しいサウンドです。
7月にはそんな豪華メンバーによる日本ツアーも決定しています。N.Y.の「今」を強烈に感じられるはず。必見ですね!


7月放送の番組「PICK UP」(2014年7月2日~2014年8月6日)では、
大林武司さんとのインタビューをご紹介しています。


http://www.jjazz.net/programs/pick-up/index.php
「PICK UP」」7月度 (配信期間:2014年7月2日~2014年8月6日)


紹介しきれなかったインタビューをこちらにまとめました。
番組と共にお楽しみ下さい!
  [Interview:黒沢綾]


大林武司 インタビュー


■バンドメンバーの紹介を大林さん風に、お願いします。


[大林武司]
まずはこのバンドを組むきっかけとなったドラマー、ユリシス・オーウェンズ・ジュニア。
彼と相談して、最初に大事なリズムセクション、ベースを誰に頼もうか?となり。真っ先に二人とも「恭士くんしかいないでしょ!!」って。
中村恭士さんは、ジュリアードを卒業された、今やN.Y.のファーストコール・ベーシスト。僕の友人は「ヤスシの仕事はベースを弾くことじゃなくて、電話を取ることだ!」と言うくらい(笑)


■おお~!(笑)


[大林武司]
それくらい超売れっ子なんですよ。まさに日本人離れしたミュージシャンとは彼のことですね!
そしてアルト・サックスはティム・グリーン。ユリシスと同級生で親交が深いんですが、アメリカのジャズシーンでもとても知られてます。クリスチャン・マクブライド(B)、マルグリュー・ミラー(P)、マイケル・ブーブレ(Vo)などと共演してます。彼はまるで教会で有り難い言葉を聞いているようなサックスを吹くんですよね。超ソウルフルでブルージーで...。そして心があたたかい人なんです。
トランペットは、バンド最年少で若干23歳のベニー・ベナック。彼は、ルイ・アームストロングとフレディ・ハバードをこよなく愛する、底抜けに明るいキャラ!


■笑顔が眩しいですよね!


[大林武司]
そうなんですよ!しかも彼は歌も上手。今後少しづつ彼のヴォーカルもフィーチャーしてバンドの色を徐々に増やせればとも思っています。
こんな風に30代前半の経験が多いミュージシャンもいれば、ベニーみたいにこれから台頭してくるであろうミュージシャンもいる。沢山の可能性があります。


■本当に可能性が秘められていますよね。ベニーのヴォーカルはまだバンドではお披露目していないんですね?


[大林武司]
まだなんですよね。最初はメンバーのメイン楽器にフォーカスしてる感じなんですが、幅広いジャズの魅力を楽しんでもらいたい気持ちはあるので、そういう意味ではヴォーカルという要素はその一つかなと思っています。


■彼の歌も楽しみです。今回、曲を持ち寄ってアルバムが作られていますが、その辺りにこだわりは?


[大林武司]
レコーディングのために書き下ろされた曲もありますし、メンバーの持っている曲から相応しいものを、僕とユリシスでピックアップしました。バンドのひとつの特徴として、全員が素晴らしい作編曲家なので、その辺も対等に考えて。おかげでバラエティ豊かになっていますね。ただバンド結成時に目指したい方向性を伝えてあるからか、こうやって一つに並べても自然になった。不思議ですね。


■大林さん作の「Festi-vibe」という曲、新しさと伝統の同居というテーマが最もハマる曲だなあと思いました。かっこいいですよね。


[大林武司]
おお、ありがとうございます!


■そんな中でスタンダードの選曲もありますよね。


[大林武司]
「Pure Imagination」はベニーが持ってきてくれたんです。これ、とっても綺麗な曲ですよね。「チャーリーとチョコレート工場」で使われた曲。今後はスタンダードのリバイバルにも力を入れて、そういった方向からジャズの良さも伝えられたらいいですね!


■話は変わって・・・今、N.Y.でオススメのジャズクラブってありますか?


[大林武司]
「Village Vanguard」ここはもうジャズのメッカですよね。会場の音の良さ、雰囲気、ミュージシャン、、、全て含めてイチオシですね。
それから「SMALLS」。夕方から深夜まで、若手のセッションからベテランまで、ゴリゴリのストレートアヘッドからコンテポラリーなものまで・・・色んなスタイルが聴けるクラブです。
もう一つ。僕が個人的に好きなのは「Dizzy's」 という、ウイントン・マルサリス監修の、Jazz at Lincoln Centerの中にあるジャズクラブです。幅広く一流のミュージシャンが出演していますね。


■大林さんがよく出演されているのは?


[大林武司]
「SMALLS」「Dizzy's」あとは「Smoke Jazz Club」という所ですね。ここはハードバップ中心のクラブです。


■では最後に、New Century Jazz Quintet、そして大林さん個人の未来とは?


[大林武司]
バンドのコンセプトの一つでも有り、個人的に大事にしている事の一つなのですが、音楽を聴いてなにか感じ取ってもらえる事を最優先にして、その中で芸術的な部分・ミステリアスな部分を大切にしながら、メンバー全員で冒険していけたらなと。それぞれの作曲スタイルが今後変わっていくかもしれませんし、どういう風に転ぶかわかりませんが。とにかくメンバー全員とってもいいキャラクターなので、その人柄の良さ・あたたかさは、ライブに来ていただけたら伝わるかと。末永く僕らの冒険を(笑)見守っていただけたらと思います。


■今日のテーマは冒険ですもんね(笑)


[大林武司]
そうですね(笑)


■どうもありがとうございました!!


[Interview:黒沢綾]


【New Century Jazz Quintet "Time Is Now" Debut Tour 2014】
7月10日 東京  Body and Soul
7月11日 東京  武蔵境スイングホール
7月12日 長野  Back Drop (中村、大林によるDuo Live!!)
7月13日 静岡  Life Time
7月14日 名古屋 Blue Note
7月15日 岡山  SOHO
7月16日 福山  リーデンローズ
7月17日 山口  JAZZ屋
7月18日 広島  広島市南区民文化センター
7月19日 大阪  寝屋川アルカスホール


『デビューアルバム『Time Is Now』2014年6月25日発売』

■タイトル:『Time Is Now』
■アーティスト:New Century Jazz Quintet
■発売日:2014年6月25日
■レーベル:Spice of Life
■製品番号:SOLNS-2

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[収録曲]

01. New Century
02. Tongue Twister
03. London Town
04. Decisions
05. Festi-vibe
06. Pure Imagination
07. Language of Flowers
08. El Gran Arado
09. Infinite Heart
10. Yasugaloo


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New Century Jazz Quintet
Benny Benack/ベニー・ベナック(Tp)
Tim Green/ティム・グリーン(As)
Yasushi Nakamura/中村恭士(B)
Takeshi Ohbayashi/大林武司(P)
Ulysses Owens Jr./ユリシス・オーウェンズ・ジュニア(D)

天才ドラマーとして注目を集めるユリシス・オーウェンズ・ジュニアと俊英ピアニストとして期待されている大林武司が中心となって、ニューヨークで活躍する有能な若手ミュージシャンが、「ジャズの歴史に深く根付きつつ若い感性でジャズの今を表現していく」をコンセプトに掲げ結成された日米ハイブリッド・バンドが生まれた。それがNew Century Jazz Quintetだ。6月25日にアルバム"Time Is Now"で待望のデビュー!そして7月10日から約2週間に亘る日本でのコンサートツアーが予定されている

大林武司 オフィシャルサイト

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『黒沢綾NEW ALBUM』

■タイトル:『Twill』
■アーティスト:黒沢綾
■発売日:2013年11月1日
■レーベル: HARU Records
■製品番号:HARU017

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[収録曲]

1.Aurora アウロラ
2.Circle ONE
3.月が赤く染まるとき
4.紫陽花の転たね
5.うさぎ
6.沙羅
7.月とワルツ
8.DRAMA
9.傘ひとつから

(黒沢綾コメント)
胸をはって、私のこれからを照らしてくれる作品に仕上がりました。一発録りの緊張感も、ひらめきも、ファインプレイも、"生きた音楽"としてこの一枚に収める事ができたように思います。純粋に楽しみ、自分でさえも知らない自分を見つけてもらえたら、嬉しいです。

この商品はSound Bright Online Shopにて購入できます


【黒沢綾 2nd Album『Twill』リリース記念ライブ決定!】
<日時>
2014年8月11日(月)
open_5:30pm / showtimes_7:00pm & 9:00pm

<出演>
黒沢 綾TRIO : 黒沢 綾(vo, p)、佐野俊介(b)、小山田和正(ds)
北床宗太郎(vln)、梶原圭恵(vln)、角谷奈緒子(vla)、佐野まゆみ(vlc)

<場所>
Motion Blue YOKOHAMA
(〒231-0001 横浜市中区新港一丁目1番2号 横浜赤レンガ倉庫2号館3F)

<料金>
自由席 ¥3,800(税込)
BOX席 ¥15,200+シート・チャージ ¥6,000 (4名様までご利用可能)

<予約・お問い合わせ>
Motion Blue YOKOHAMA
045-226-1919(11:00am~10:00pm)
https://reserve.motionblue.co.jp/reserve/schedule/move/201408/

<詳細>
http://www.motionblue.co.jp/artists/kurosawa_aya/(Motion Blue YOKOHAMA)


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黒沢綾 (Singer,Piano) プロフィール

音楽教室を営む母をもち、4歳よりピアノ、エレクトーン、中学では吹奏楽、高校では声楽、と、幼少期より音楽三昧の日々を送る。尚美学園大学JAZZ&POPSコースの一期生として自然な流れでジャズに傾倒しながら、在学中にジャズシンガーとしてキャリアをスタート。2004年、同コースを首席で卒業。友人の結婚をきっかけに日本語曲の創作を始め、以降はピアノ弾き語りにシフト。
2009年、ピアニスト Hakuei Kimとの共同プロデュースによる、1st Album「うららか」をリリース。繊細な心模様を詰めこんだ良作となった。制作中に最愛の母を亡くし大きなターニングポイントを迎えるも、母譲りの澄んだ声質と幅広い音楽体験を活かした楽曲制作に力を注ぐ。現在は自身のトリオ、タップダンサーkurikoとのユニット「うたっぷす」、弦楽四重奏とのコラボ、ライブの原点であるジャズシンガーとしての活動のほか、CM歌唱やコーラスなど、声を活かし幅広く活動中。
2013年11月、2nd Album「Twill」をリリース。より有機的で奔放な表現世界と、圧倒的な完成度で注目を集める。
現在、インターネットラジオ・ステーションJJazz.Netの番組ナビゲーターをつとめる。

HARU Recordsアーティストページ


シャイ・マエストロ インタビュー[インタビュアー黒沢綾]:インタビュー / INTERVIEW

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研ぎ澄まされた感性を鮮烈に放つ新作『THE ROAD TO ITHACA』を昨年末に発表し、
先日来日公演を行ったイスラエル出身のピアニスト、シャイ・マエストロ。

美しく繊密で、重心深く綴られた楽曲の数々。ライブは躍動的でありながらも、
彼のルーツを思わせる哀愁の陰、湿度にも似た心地よさなど、生ならではの音世界がありました。

私がナビゲートを担当している番組「PICK UP」では現在、彼とのインタビューの模様をご紹介しています。
物腰柔らかく、言葉を選びながら丁寧に語って下さいましたよ。

http://www.jjazz.net/programs/pick-up/index.php
(配信期間:2014年4月2日~2014年5月7日)

そして紹介しきれなかったインタビューをこちらにまとめました。
番組と共にお楽しみ下さい!
[Interview:黒沢綾]


シャイ・マエストロ インタビュー


■イスラエル出身のベーシスト、アヴィシャイ・コーエンのメンバーとしての活躍でシャイさんのことを知った方も多いかと思いますが、彼から学んだこととは?


[シャイ・マエストロ]
沢山あるよ。音楽的な部分はもちろん、5年間をともにした中で最も強く感じたのは...目も耳も心も全てオープンにして、あらゆるものに興味を注ぐっていうことかな。その瞬間瞬間起こっていることに、敏感に意識を向けているべきだ、と。


■なるほど。音楽的な影響というよりは精神性ですね。


[シャイ・マエストロ]
アビシャイとの時間が素晴らしい事には変わりないけれど、それまでに培った経験、両親から受けた影響の占める割合が大きいんだ。だから、"今まで過ごした人生+現在"という感覚の一部として、彼との時間を捉えてる。僕はこうやって世界中を旅しているけど、常にスポンジのように吸収していたいと思うよ。多くの人に出会って、各国の文化に感化されたい。だから出来る限り音楽中心にならないで、フラットな気持ちでいようと心がけているんだ。演奏内容を具体的にどうするか、より、エゴから解放されてナチュラルに、湧き出るものに正直でいようと思わせてくれた。そんな5年間だったね。そういう意味でアビシャイには感謝してるよ。


■昨年リリースの新作『ロード・トゥ・イサカ』について。このアルバムタイトルにもある"イサカ"はギリシャの詩人、カヴァフィスの詩。どのようなイメージをもって楽曲制作されていたのでしょうか?


[シャイ・マエストロ]
ITHACAは、ギリシャ神話に出てくる地名なんだ。オデュッセウス(弓の神様)が、他の神によって10年間島流しになり、離れた故郷がITHACAという島。数々の冒険をし、困難を経て、最終的に故郷に辿り着くものの、妻にも本人と信じてもらえない。そこで得意な弓の腕を試され、見事に証明した・・・という物語なのだけれどもそのカヴァフィスの詩"ITHACA"にはこう綴られているんだ。


 君の歩む旅路が、長くて充実したものであると願う。
 多くの都市を訪れ、多くの先人に学び、多くの世界を見なさい。
 苦難、幸福、すべてに感謝しなさい。
 故郷に辿り着く頃には、きっと大きな糧を得られるだろう。
 ゴールにたどり着くことが全てではない。
 経験を積み、成長していると思えたならば、故郷は君を笑うことなどしないだろう



これは僕が初めてイスラエルを出てツアーに出る直前、父から渡された詩なんだ。メッセージが詰まっているんだと感じたよ。そしてこれが、僕の信念になった。レコーディングを終えて振り返ると、この詩のイメージが強く重なっていて。だからこのタイトルに決めたんだ。


■この一枚で旅を描いているんですね。アルバムの流れにこだわりは?


[シャイ・マエストロ]
そうだね。ストーリー性を持たせるようにはしたよ。そして僕は何より、始めの"一音"が大事だと思っているんだ。リスナーと信頼関係を築くための"きっかけ"だからね。その一音をどうアプローチするかでその先が決まっていく。それで最後に、トータルのイメージを大事にしながら曲を並べていった感じかな。


■個人的に、最後に収録された唯一の"歌モノ"がとても印象に残っています。旅の終わりを告げるエンドロールのような・・・。


[シャイ・マエストロ]
Shai Maestro Trioと銘打ったアルバムなので、歌は最後にもってこようと元々決めていたんだ。互いの世界観と秩序を守るためにもね。彼女の歌声はYouTubeで聴いて惹かれていた。いつか一緒にやりたいな、ってね。実際、彼女がサウンドチェックがてら歌い始めた瞬間、涙が出るような衝撃だったよ。スタジオに居合わせた皆が心震えていたんじゃないかな。4月のパリ公演では彼女も参加してくれる。共演がとても楽しみだよ。


■それではラストに今後の予定について教えて下さい。


[シャイ・マエストロ]
予定・・・把握できてないな(笑)、カナダ、ドイツ、スウェーデン・・・ヨーロッパがメインかな。日程までは・・・。とはいえ、世界各国で演奏できることは本当に恵まれているよ。感謝してる。そうだね、詳細はウェブサイトでチェックしようかな(笑)


そうそう、来年のどこかのタイミングで新しい作品リリースの話もあるんだ。トリオに加えてヴォーカルグループ、トランペット、バイオリン。ブルガリアの民謡と自分たちの音楽の融合がテーマで、ヴォーカルをフィーチャーした大編成だよ、今までにない試みなので楽しみにしておいてください。


[Interview:黒沢綾]


【Shai Maestro Trio - Paradox】




『シャイ・マエストロ・トリオの待望のセカンドアルバム』

■タイトル:『THE ROAD TO ITHACA』
■アーティスト:SHAI MAESTRO TRIO
■発売日:2013年12月8日
■レーベル: AGATE
■製品番号:AGIP-3526

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[収録曲]

1.Gal
2.Cinema G
3.Let Siund Be Sound
4.Paradox
5.Untold
6.Invisible Thread
7.Zvuv (The Fly)
8.The Other Road
9.Vertigo
10.Malka Moma
11. Water Dance(Bonus Track)


その力強いタッチ、美しい旋律、躍動感のあるピアノが絡み合う鮮烈ピアノトリオ。官能的に、研ぎ澄まさせた豊かな感性によって語られる心地よさ、鮮明に浮かび上がる。シンプルに、透明感に満ちた明確な旋律を奏で、カラフルに彩られた咆哮な香り。息のあったピアノトリオの演奏が、躍動する緻密に塗り込められてゆく楽曲。美しいインプロヴィゼイション。多大な影響を受けたキース・ジャレットも賞賛する新作が完成。初めてツアーに出る時に父親から持たされたギリシャの詩人、カヴァフィスの詩『Ithaca』。ギリシャにある島イサカ、ギリシャ神話に出てくる主人公オディッセイアが故郷、イサカに困難を経てたどり着いたという物語から生まれた詩。2006年にアヴィシャイ・コーエンのグループに参加し、「Gently Disturbed」、「Aurora」、「Seven Seas」といったスタジオ録音作に参加。世界的に他界評価を受け2010年より、イスラエル出身のドラマー、現在多方面で活躍をするジヴ・ラヴィッツとペルー出身のベーシスト、ホルヘ・ローダーによるシャイ・マエストロ・トリオ。さらなる躍進を遂げる『ロード・トゥ・イサカ』発売。


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<Photo:JB Millot>

SHAI MAESTRO [シャイ・マエストロ] (Piano) プロフィール

1987年イスラエル出身。5歳からクラシック・ピアノを始め、8歳の時に聴いたオスカー・ピーターソン『Gershwin Songbook』でジャズに開眼。テルマ・イェリン国立芸術教育学校でジャズとクラシックを学び、バークリー音楽院の奨学金制度を得て4年間ジャズ・ピアノやコンポジション、さらにはインド音楽などの民俗音楽論を習得した。その後NYに拠点を移し2006年からは、チック・コリアのバンドメンバーとして日本でも有名なベーシストのアビシャイ・コーエンのコンボにも参加。

オフィシャルサイト

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『黒沢綾新作』

■タイトル:『Twill』
■アーティスト:黒沢綾
■発売日:2013年11月1日
■レーベル: HARU Records
■製品番号:HARU017

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[収録曲]

1.Aurora アウロラ
2.Circle ONE
3.月が赤く染まるとき
4.紫陽花の転たね
5.うさぎ
6.沙羅
7.月とワルツ
8.DRAMA
9.傘ひとつから

(黒沢綾コメント)
胸をはって、私のこれからを照らしてくれる作品に仕上がりました。一発録りの緊張感も、ひらめきも、ファインプレイも、"生きた音楽"としてこの一枚に収める事ができたように思います。純粋に楽しみ、自分でさえも知らない自分を見つけてもらえたら、嬉しいです。

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黒沢綾 (Singer,Piano) プロフィール

音楽教室を営む母をもち、4歳よりピアノ、エレクトーン、中学では吹奏楽、高校では声楽、と、幼少期より音楽三昧の日々を送る。尚美学園大学JAZZ&POPSコースの一期生として自然な流れでジャズに傾倒しながら、在学中にジャズシンガーとしてキャリアをスタート。2004年、同コースを首席で卒業。友人の結婚をきっかけに日本語曲の創作を始め、以降はピアノ弾き語りにシフト。
2009年、ピアニスト Hakuei Kimとの共同プロデュースによる、1st Album「うららか」をリリース。繊細な心模様を詰めこんだ良作となった。制作中に最愛の母を亡くし大きなターニングポイントを迎えるも、母譲りの澄んだ声質と幅広い音楽体験を活かした楽曲制作に力を注ぐ。現在は自身のトリオ、タップダンサーkurikoとのユニット「うたっぷす」、弦楽四重奏とのコラボ、ライブの原点であるジャズシンガーとしての活動のほか、CM歌唱やコーラスなど、声を活かし幅広く活動中。
2013年11月、2nd Album「Twill」をリリース。より有機的で奔放な表現世界と、圧倒的な完成度で注目を集める。
現在、インターネットラジオ・ステーションJJazz.Netの番組ナビゲーターをつとめる。

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林正樹 西嶋徹DUOインタビュー:インタビュー / INTERVIEW

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"菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール"や"Salle Gaveau"のメンバーに名を連ねるなど、
幅広い活躍で知られるピアニスト、林正樹が盟友のベーシスト西嶋徹と共に制作した
アルバム『El retratador』を3/12にリリースしました。

この2人のDUO作品はなんと約10年振り。
新作では二人が精通する南米の音楽をイメージさせる、美しくも繊細な楽曲が並んでいます。

そこで今回のDUO作品について、互いの事を熟知するお2人に敢えて同じ質問をぶつけてみました。
2人の信頼関係も分かるメールインタビューです。


【林正樹 西嶋徹DUOインタビュー】

■Q. 「林正樹STEWMAHN」のメンバーとしても活躍するなど旧知の仲のお二人。
 演奏者として互いの素晴らしい部分を教えて下さい。



[林正樹]
西嶋さんが出す一音一音は理性でコントロールされた嘘のない音。数多くの音楽を共に演奏してきましたが、どんな時でもそこで何が起きているのか全ての音を見定め、僕が進みたい方向に舵を取ってくれる素晴らしいベーシストです。西嶋さんがいればいつでも安心です。

[西嶋徹]
林君と一緒に演奏する度に新たな発見があります。知り合った頃から、アイデアのユニークなところにはいつも感心してきましたが、近年は音楽に陰影とか、立体感がどんどん増してきて、また新しい世界を見せてくれているように感じます。今から10年後、お互いどんな風に変化していくのか楽しみです。




■Q. 南米音楽のテイストがありつつも、クラシカルな雰囲気の繊細なサウンドが印象でした。
 この作品はどのようなイメージをもって制作/レコーディングされたのですか?



[林正樹]
リラックスした状態で自然と音の会話を楽しんでいましたね。前作「Passage」から約10年経って、お互い様々な音楽体験を積んで深みが出たと思います。レコーディングの直前に行ったリハーサルでは、何を演奏してもすでに二人の音楽として成立していました。そこに二人の音があれば何でもいいんだ!と少し乱暴ではありますが、純粋にそう感じちゃいました。

[西嶋徹]
前作から10年ほど経ちましたが、その間に出会った音楽が自分の中で混じり合って、現れてきたものを記録できたらいいなと思いました。特別に南米の音楽のスタイルを意識したつもりはないのですが、自分の音楽はこれまでに感じてきた南米の民族音楽特有の豊かさや、優しさ、哀しさといったものには大きな影響を受けていると思います。




Q. アルバム収録曲中、約半分が互いのオリジナル。
 中でも印象的な自身の1曲を(選んで頂き)エピソードと共に教えて下さい。



[林正樹]
「耳雨」
レコーディングのギリギリ直前に出来上がった曲。曲の構成も演奏直前に決めて、鮮度抜群のまま収穫に成功しました。この作品の全体像を現すに相応しいオープニング曲になったと思っています。

[西嶋徹]
「Folded wind」
東北の震災のあとの4月に書いた曲です。どのような解釈をされるかは聴く方に委ねたいと思いますが、自分は震災を機に、気づいたことがたくさんありました。このアルバムをつくることになった時点で、自分の中では、遡ってこの曲がある種の基点になっていたかもしれません。




Q. この作品の世界観と類似する作品(楽曲)、もしくはイメージがありましたら理由と共に教えて下さい。


[林正樹]
類似するとはおこがましくて言えませんが、やはりBobo Stensonからの影響は大きいです。こんなピアノが弾きたい。こんなベースを弾いてほしい(笑)、なんてついつい思ってしまいます。


「Olivia - Bobo Stenson Trio」


[西嶋徹]
見知らぬ世界へのあこがれも素敵ですが、いまは自分のおかれた環境と、自分の関わりから生まれる音楽を作れたらいいなぁと思っています。そういった音楽が持つリアリティで伝えられるものを大切にしたいです。アギーレの音楽からは生活の風景を感じます。






Q. 今後の予定/やってみたいことがありましたら教えて下さい。


[林正樹]
4月には自己のプロジェクト「間を奏でる」の初めてのCDが発売されます。ピアノ、ハープ、バイオリン、ベース、パーカッションといった編成で、どこで演奏する時もPAを使わずに生音で演奏しています。昨年発表したピアノソロアルバム『TEAL』、今回の『El retratador』、そして「間を奏でる」と、より心地よく、より繊細な音の世界を追求していきたと思ってます。

[西嶋徹]
いろんな楽器編成で自分の曲を演奏してみたいです。特に弦楽器中心のアンサンブルに興味があります。




ありがとうございました。




【林 正樹 西嶋 徹 / 『El retratador』試聴動画】

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『El retratador / 林正樹 西嶋徹DUO』

■タイトル:『El retratador』
■アーティスト:林正樹 西嶋徹DUO
■発売日:2014年3月12日
■レーベル: APOLLO SOUNDS
■製品番号:APLS-1404

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[収録曲]

1. 耳雨 Jiu
2. 褻の笛 Que no fue
3. El retratador
4. Alfonsina y el mar
5. mの問いかけ Emu no toikake
6. Muro de stono
7. Orbit P
8. Folded wind
9. 残光 Zankoh
10. 西日 Nishibi

その高い演奏力、表現力で菊地成孔、椎名林檎、ローリー、など様々なジャンルの音楽家に高く評価されている ピアニスト林正樹が、盟友であるベーシスト西嶋徹と 10年ぶりにデュオでのアルバムをリリース!

アルバムは二人が多く演奏する南米音楽のテイストを意識したそれぞれのオリジナルナンバーを中心に収録。 カバー曲アルゼンチンの作曲科Ariel Ramírezのナンバーを アレンジし収録した。 熟練したコンビネーションと円熟を迎えつつある二人の演奏、 オリジナリティ溢れる美しく繊細なデュオアルバムのリリースです。


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林 正樹 (作曲、編曲、ピアノ奏者)

1978年東京生まれ。 独学で音楽理論の勉強を中学時代より始める。 その後、佐藤允彦、大徳俊幸、国府弘子らに師事し、ジャズピアノ、作編曲などを学ぶ。 慶応義塾大学在学中の1997年12月に、伊藤多喜雄&TakioBandの 南米ツアー(パラグアイ、チリ、アルゼンチン)に参加し、プロ活動をスタート。 現在は自作曲を中心に演奏するソロピアノでの活動や、自己のグループ「林正樹STEWMAHN」、田中信正とのピアノ連弾「のぶまさき」、 生音でのアンサンブルにこだわった「間を奏でる」などの自己のプロジェクトの他に 「菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール」「田中邦和&林正樹 Double Torus」 「Salle Gaveau」「エリック宮城EMBand」「Archaic」「クリプシドラ」など 多数のユニットに在籍中。 温かみのある感性を持って、独自の情感豊かな音楽を生み出している。 2008年「Flight for the 21st/林正樹ピアノソロ」、2011年「Crossmodal/ 林正樹STEWMAHN」を発表。 2013年3月には2ndソロピアノCD「Teal」を発表。 NHK「ハートネットTV」「ドキュメント20min」などのテーマ音楽も担当する。

林 正樹 Official Site


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西嶋 徹 (ベース奏者)

1973年東京生まれ。 5歳よりバイオリンを始め、高校の頃エレキベースを手にする。 日本大学工学部を卒業後、コントラバスに転向。 1999年からJazztronikやDJ須永辰緒のレコーディングに参加。 2000年より小松亮太、葉加瀬太郎等のサポート等を行う。 ヴァイオリンの 会田桃子率いるクアトロシエントスのメンバーとして、 ライブ、レコーディングに参加。 2004年新澤健一郎率いる"Nervio"に加入。 ピアノの林正樹とともに、 アルバム"passage"をリリース 。 他にも、インストグループの"森"や、ピアノトリオ"west/rock/woods" 、林正樹"STEWMAHN"のメンバーとしての活動も。これまでに上妻宏光、中孝介、綾戸智恵、小野リサ、カルメンマキ、木住野佳子、小松亮太、榊原大、中島美嘉、葉加瀬太郎、長谷川きよし、古澤巌、 Pablo Zieglerなどのツアーやレコーディングに参加。

西嶋 徹 Blog

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